「インフルエンザで人工呼吸器装着」~実際の生保事例17~

頼れる保険を用意しよう

ステロイドは諸刃の剣

ステロイドという薬を耳にしたことがあるでしょうか?
ステロイドは副腎皮質ステロイドホルモンのことで、薬の名前ではありません。
どういう人が使うかというと、「何かしらの炎症を起こしている人」です。

肺炎がひどくなれば一時的にステロイドを使用して、炎症を抑えて呼吸状態を改善します。
交通事故や高所から転落して頸椎損傷を起こした人も、ステロイドパルス療法といって、大量のステロイドを一時的に使用することで、呼吸状態の悪化やその後の脊椎障害を予防することができます。

また、慢性的に使用する例としては、自分で自分の身体を攻撃してしまうことで発病する、膠原病(こうげんびょう)もそうです。
自分を攻撃した結果全身で何らかの炎症反応が起こり、全身の様々な部位に障害を起こします。
難病指定されているものも多く、それだけまだ原因も治療も解明されていないということです。

膠原病でよく知られている病気の一つが、関節リウマチですね。
女性に多く発症し、次第に関節を変形させてしまう病気です。
重度のリウマチの患者さんは、寝たきり状態になってしまうことだってあるのです。

リウマチの治療も研究は進んでいますが、完全に治すところまでは、到達していません。
また、治療効果が高くても、<よくある生命保険のムダ04「高額すぎる医療保険」>でもお伝えした レミケードのように、金額が高すぎて続けられないこともあります。
膠原病は、癌のように数か月・数年で命を奪われることは少ないのですが、その代りに一生抱えて生きなければならない病気なのです。

そのため、治療は「できるだけ症状を抑える」方針になります。
そこで出てくるのが、冒頭で投げかけたステロイドなのです。

ステロイドは、本当によく効きます。
私も年に数回、調子が悪くなると内服薬でお世話になります。
喘息治療のための吸入ステロイドは普段から使っているし、これからも一生お世話になるでしょう。

喘息のコントロールがつかず、夜も眠れないくらいに苦しんでいたときは、経口(錠剤)ステロイドを内服すると、嘘のように症状が軽くなります。
ありがたくもあり、怖くもなります。

それだけ身体に作用のある薬を、リウマチの患者さんは長期に、もしくは一生内服するのです。
関節の変形や痛みをひどくしないためには、自分で自分を攻撃しないように、ステロイドで抑える必要があるから。

しかし、害が何もないわけではありません。
炎症を抑える効果が強いということは、それだけ弊害(副作用)も強いということです。

ステロイドの副作用は、命に関わります。
そのため、医療機関によっては、投与する前にステロイドの説明書と、使用することの同意書を交わすことがあります。
私も受け取って、同意欄にサインをしたことがあります。

<ステロイドの副作用>

易感染性:免疫が抑制されることで、抵抗力がなくなり、感染しやすくなる
糖尿病:薬剤の影響により、血糖が高くなる
骨粗鬆症:骨がもろくなり、骨折しやすくなる
胃潰瘍:胃粘膜が弱くなり、胃潰瘍を起こしやすくなる
精神症状:不眠やうつなど精神症状を引き起こす
離脱症状:大量投与や長期投与していた場合、急にやめてしまうと副腎不全症状(低血圧・低血糖・全身倦怠感など)が現れる
その他:満月様顔貌、多毛、ニキビなど

この中でもっとも危険なのは、「易感染性」です。
これは、健常な人ならただの風邪で済むものが、命を落とすような重度の肺炎などになる
など、重症化しやすいということです。

ステロイドは、強力な炎症を抑える作用があると同時に、命取りにもなりかねない。
まさに「諸刃の剣」なのです。



リウマチ治療のせいで、インフルエンザが命の危険に!?

ある60代の女性がリウマチのため、ステロイドの内服治療を何年も続けていました。
副作用があることは重々わかっていましたが、全身の関節の痛みが増し、関節の変形が目
に見えてわかるようになってきたから。

リウマチは、かんたんに言ってしまうと、体質の病気です。
体質は変わりませんから、長いお付き合いになります。

体質の病気を我慢して乗り切ろうというのは、無理があります。
それに、放っておくと骨破壊(骨の変形)はどんどん進んでしまいます。
ですから、この女性はしぶしぶ数年前から、ステロイドを内服するようになったのです。

重い物を持ったりすることはできませんでしたが、ステロイドのおかげで、なんとか60代の女性らしい日常生活を送ることができていました。
しかし、現役で仕事をしていたこの女性には、毎年くる「あるもの」が恐怖でした。

それは、冬場にまん延する、インフルエンザです。
平日は仕事をしている時間が起きている時間のほとんどを占めますので、職場のような閉鎖空間では、席の近い人が感染してしまうと、どうしてもうつってしまうのです。

この女性、過去にも一度インフルエンザからの肺炎で、意識を失うくらいの呼吸障害が出て緊急搬送されたことがありました。
まだ50代の頃です。

インフルエンザは、毎年流行します。
ワクチンを接種していても、うつるときにはうつるのです。
そして、うつってしまったときに比較的軽症で済むか、命に関わるかは、ベースとなる体の状態によるのです。

ステロイドを内服しているこの女性は、特に感染に弱い状態にあります。
ですから、数日の熱でやり過ごすことのできるはずのインフルエンザで、入院騒ぎになってしまうのです。

インフルエンザで人工呼吸器装着の非常事態

インフルエンザはその年の型によって、割と軽症な年もあれば、ものすごく辛い、重症な年もあります。

2016年冬のインフルエンザは、比較的症状の軽い年でした。
むしろそれが災いし、軽いからインフルエンザに発症している人が気づかずに登校・出勤してしまった人から、周囲への被害が拡大しました。

医療機関でもインフルエンザを持ち込んで入院してしまった人や病院スタッフ、お見舞いの人達から患者さんが感染してしまい、大問題となった年でした。
インフルエンザの患者さんが続けて発症した病棟は、患者個人の隔離だけではなく、「病棟閉鎖」と言って、病棟全体を他の部署との接触を絶つ必要があるのです(ものすごく大変です)。

ですから、インフルエンザと診断された患者さんは、どんなにお年寄りでも基本的には入院をお断りします。
感染してしまった入院患者さんを隔離して被害を抑えることに精一杯で、新しくインフルエンザを持ち込まれたら困るからです。

しかし、それでも入院となる場合があります。
それは、命に危険が迫っているとき。
さすがに、そんな場合には「自宅で安静にしていてください」と帰すわけにはいきません。

この女性も、2017年の年が明けて早々、インフルエンザを発症してしまいました。
症状の増悪が健常な人と比べてあっという間で、気づいたときには既に脱水症状を起こし、自分ではもう水分をとる力もありませんでした。
普段は仕事もしている60代の女性が、水も飲めなくなってしまったのです。

そして脱水症状と肺炎によって、呼吸障害と意識障害で声かけに反応もなくなり、夜間救急搬送されました。
さすがにこれは、入院を断るなんてことはできません。
女性はそのまま緊急入院し、人工呼吸器に数日お世話になりました。

人工呼吸器は、口にマスクを当てて酸素を吸うのとは、全く別物です。
自力で吸う力もない人には、いくら口元で酸素を流しても身体の中には取り込まれません。

人工呼吸器をつなぐときには、患者さんの気道に専用チューブを入れて機械とつなぎ、人口的に酸素を送り出すのです。
1回のどのくらいの量を、1分間にどのくらいの回数を、という具合に。

この女性は、軽症の多かった年のインフルエンザで、生死の淵をさまようところまでいったのです。
結果的には、数日で人工呼吸器からは離脱して、10日ほどの入院ですみました。

入っててよかった!これぞ本当のお宝保険

この女性は、リウマチによるステロイド治療をしているせいで、常に感染の危機にさらされています。
恐らく、今の状態で引き受けてくれる生命保険は、ほとんどないと思います。
仮にあったとしても無制限型で、かなり悪い条件でしょう。
しかし、リウマチと診断を受ける前に加入した生命保険があったら?

医療保険に加入後の病気による入院治療は、原則は全て支払い対象になります。
ですから、この女性も昔入った医療保険で、入院給付金を受け取ることができました。
入院期間としては10日ばかりですが、それでもありがたいですね。

また、退院してもすぐに仕事へ復帰することはできません。
医師からもしばらくは自宅安静と言われて退院していますから、入院期間と合わせると、仕事を2週間以上休むことになりました。

有給は既に使いきっていたため、今回の入院と自宅療養は、全て欠勤扱いになってしまいました。
そこで傷病手当金を請求し、欠勤による減給へ対応することにしました。

生命保険や傷病手当金などの保障で、「プラスになる」ことはありません。
高額療養費の申請でも、必ず生命保険等で補てんされた金額を記入する欄があります。
自分が保険料を納めてきたからこそもらえるものなのに・・・と思うのですが、保険金を併せて受け取って、プラスにならない仕組みになっているのです。

しかし、生命保険の給付金や高額療養費がなかったら、欠勤の上に、医療費を支払うハメになってしまいます。
無理してすぐに仕事に戻れば、持病は一層悪くなってしまうことでしょう。
女性は、生命保険と制度のフル活用で、自己負担を極力減らすことができました。

よく、バブルの頃に加入した生命保険を「お宝保険」といいます。
利率が年6%と言われた時代です。
しかし、この女性にとっては、そんな高利率のものでなくても、リウマチという診断を受ける前に加入した生命保険が、まさに「お宝保険」なのです。
今からもっと保障の厚いものに入りたいと思っても、そうはいかないからです。

困ったときに頼れるものを、健康なときに用意しておくこと。
これは本当に大事ですね。
生命保険だけ入っていれば備えは完璧、とは言いませんけれど。

あなたには、頼れるものがありますか?