就業不能保険(短期・長期)って?必要?いらない?をシンプルに解説!

就業不能保険の必要性

生命保険って、本当に種類が多くてわけがわからない・・・そう言いたくなるのも、わかります。

私も最初に生命保険に加入したときは、全く何のことかもわからずに母親の言う通りに入りましたもの。

生命保険にはどんなものがあるのか、大まかにこちら(生命保険のはじめに~生命保険の必要性と種類~)でお伝えしましたが、今日はその中でも、就業不能保険についてお話したいと思います。


就業不能保険って、どんな保険?

就業不能保険は、一般的に生命保険と称される死亡保険よりもまだまだ認知度が低いと言えるでしょう。
ですから、今日は入るかどうかは別として、「就業不能保険とはどんなものか」を理解していただければと思います。

では、

なんらかの原因によって、突然仕事ができなくなったら?
いつ復帰できるようになるか見当がつかない状況だったら?

そんな事態に遭遇したとき、あなたにはその“ピンチ”を乗り切るだけの貯蓄がありますか?

「ハイ!大丈夫です!!」
と言える人なんて、そうそういませんよね。
だって、その働けない状況がいつ終わるか、ゴールが見えていないのですから。

半年や1年までなら、今までの貯蓄でなんとかしのげるかもしれません。
でも、その働けない状況=就業不能という状況が、今後一生続くものだとしたら?

それでも大丈夫と言いきれる人は、そもそも保険なんて検討する必要すら不要ですよね。
自分が働かなくても得られる収入(平たく言うと、不労所得)がある上に、それが永久的に続くということなのですから。

こんなピンチは、いつ・誰に・どのように訪れるかわかりません。

生きているけれど、働けない。

当然、働かなくても生きていくためには食事も食べるし光熱費だって必要。
どこかしらに住まう必要があるわけで、住居費だってかかります。
ですから、生きているのに働けない状況というのは、非常に困る事態ですよね。

その就労不能状態の間のための生活を支える保険が、就業不能保険です。

就業不能保険には就業不能給付金の受取期間によって、「短期」「長期」があります。

短期でも3年から5年という期間になります。
長期になると、60歳や65歳という年金支給開始年齢につなぐまでの期間となります。

これだけ年単位における就業不能状態は、確かに預貯金だけでは対処できないでしょう。
そのための保険、というわけですね。

近年結婚せずに一生を終える「おひとりさま」が増えたこともあり、この就業不能保険が結構なニーズを生んでいます。
確かに、結婚していたら妻なり夫がいますから、自分が倒れたとしても生活が即立ち行かなくなるというリスクは低いでしょう。

しかし、自分一人だったらどうでしょう?
扶養すべき人間がいない代わりに、自分を助けてくれる人間もいない(両親・兄弟を除き)のです。
かといって、死亡保険は原則自分が死んだ後に受け取る保険ですから、意味がありません。

このような時代背景のため就業不能保険は契約件数を伸ばしているのです。
これならば、自分に“もしも”のことがあったとしても、資金面で支えてくれるものとなり、おひとり様にとってのリスクヘッジとなるからです。

障害年金というセーフティネットも存在しますが、それだけでは扶養するべき家族のいる人は足りないかもしれませんし、傷病手当金のない自営業の人にとっても、就業不能保険は心の安定剤となりそうに思えますが…



就業不能ってどんなとき?

「いつどんな時にピンチが訪れるかわからない・・・それなら自分にも必要!?」

そう思ったあなた、ちょっと待ってくださいね。
そんなにおいしい話はないんですねぇ、世の中。

まず、どんな状況に陥ったら就業不能となるのか考えてみましょう。

  • 事故による怪我
  • 身体的な病気
  • 精神的な病気

大きく分けて、この3つになると思います。
医療が進歩したおかげで、30年前なら事故や病気で助からないと思われたような重篤な状態でも、命をとりとめるケースが増えたことは、想像に難くないでしょう。

しかし、命が助かることと元の状態に回復することは、イコールではありません
ですから、命こそ助かったもののベッドの上、ということが起こり得るようになったのです。
それも、長期に渡って。

それだけではありません。

近年、ブラック企業に就職してしまいメンタルを病んで退職したり、そのまま引きこもりになってしまったり・・・という若者のケースも増えています。

うつ病にかかり、長期にわたり外来通院し、自宅療養が必要となる人もいます。
これらの精神的な病気や病名のつけられていない状態も、確かに就業不能と言えば就業不能です。

病気と怪我は誰が見ても、また医学的所見的にも明らかに「就業不能」と言えるラインが存在します。
しかし、精神的な病気に関しては本当に働けないのか、それとも怠けているのか、正直わかりませんね。

私も昔、心療内科の病棟で勤務していましたけれど、本当に食事すらとらずに死んだ魚のような目をしている男性がいました。

一方で、笑いながら「死にたーい」といって腕にかすり傷程度のリストカットを繰り返し、ナースステーションにやってきては「大丈夫?」と言ってもらいたがる若い女性もいました。

果たして二人とも「就業不能」なのかと問われたら、それはなんとも言えませんね。

前者はただ覇気のないフリをしていただけかもしれないし、後者は実は一歩間違えば本当に命を落としてしまう危険性もあるわけですから。
実際、そのうちの何人かは本当に自殺してしまいました。

精神的な面を理由にした場合は、主治医でさえも「就業不能」という診断書をさらっと書けるほど簡単な問題ではありません。
本当は働けるのにだましている「なりすまし」を、科学的・医学的に線引きできないからです。

では、就業不能保険に入ったあとで実際自分に病気が見つかり、「もうこれは働けない」と思ったとしましょう。
本当にあなたは保険金を受け取ることができるのでしょうか。
病気なら、診断書もすぐに書いてもらえそうですね?
いやいや、違うんですねぇ。

生命保険における「就業不能」の定義は、一般的に

【1】病気や怪我を原因としている
【2】治療を目的として入院や在宅療養を受けている
【3】いかなる職業にも従事できない

この3つすべてに当てはまる状態を指します。

【3】にかなりふくみを持たせている上に、生命保険には「免責期間」というものがあります。
簡単に言ってしまうと、「保険金が支払われない期間」です。

なぜこういうものがあるかと言うと、何か病気があることを知っていながら、それを隠してから保険に入る人がいるからです。

例えばがん保険なら、免責期間は90日(3か月)が一般的です。
もし胃が痛くて痩せてきたし、食べ物も通らない・・・これは胃癌かも!?と思っても、保険金がおりなくなるからと、3か月待ってから病院に行くことは、まずありませんよね。

この就業不能保険にも、同じように免責期間が設けられています。
怪我はいつ起こるかわかりませんけれど、病気による就業不能は本人に心当たりがあるかもしれませんものね。
就業不能保険における免責期間は7日から365日と幅がありますが、180日程度が普通とされています。

私自身も、慢性的な持病があります。
治るものではありませんので、今後一生「お付き合い」していくものです。
年に数回ほど、コントロールがうまくつかなくて本当に働けないくらいに調子を崩してしまう日が続くこともありますが、数日のことですから有給で対処しています。

そう、私が仮に就業不能保険に入っていたとしても、臨時の体調不良程度では就業不能年金を受け取ることはできないのです。
仮に私が一時的に入院したとしても、10日程度の入院期間ならば、公的なセーフティネットである健康保険からの傷病手当金を申請することになるのです。
そうなると、なんのための生命保険だったのか・・・となってしまいますね。

私の仕事は看護師ですから、病気ではなくて、仮に怪我で右手が全く動かない病気になってしまったら、働きたくても働けなくなってしまうでしょう。
言葉だけでなんとかなる部署もあるかもしれませんが、言葉で交わした内容をどこかに書き留めたり記録に残すことを求められた場合、右手が使えなければ書くこともパソコンを使うことも人並みレベルにはできないからです。

そんな事態が、いつ起こるかわかりません。
そうなったとき、我が家はシングルペアレントなので、生活費だけでなく息子の教育費の問題も出てきます。

こういった「死んではいないけれど働けない」という、可能性の低いリスクまで回避したいと思うのであれば、就業不能保険もよいでしょう。
ただし、シングルペアレントだからこそ保険料をやたらと払うこともできない、という現実もあるのです。

どの保険にも言えることですし、こちら(生命保険のはじめに~生命保険の必要性と種類~)でもお伝えした通り、生命保険を考える際には自分が何に価値観を持つのか、公的なセーフティネットでは十分ではない、どのリスクに対して備えておくべきなのか、これらを考える必要があります。
単純にいるかいらないか、と決められないのです。

とはいえ、どれが自分の人生観やライフプランに合うものか、保険商品の内容を知らずして選択することはできません。
どの会社のどの保険商品・・・という前に、まず一般的な生命保険の種類を勉強してから検討しても、遅くはありません。

生命保険の金額についてはこちら(生命保険が「人生で2番目に高い買い物」になるかどうかはあなた次第!?)で詳しく例を挙げましたが、生涯払う保険料は、人生において5本の指に入るものである可能性が高いのです。
そんな高価な買い物をするのに、勉強せずして選ぶなんて、それこそリスクが高すぎますものね?

ここまで書いた時点で、実はちょうど我が家の呼び鈴が鳴りました。
予定にない訪問は、おそらく何らかの勧誘。

いないフリをしてもいいのですが、とっととお帰り頂いた方が気楽なので出たところ、案の定「〇〇生命です~」と言って、おばさまがお二人玄関に立っていました。

生命保険の会社の人が来て、私の利益になるようなことわざわざ教えてくれることはありません(保険会社の人だって、それで生計立てているのですから当然です)。
話も聞かずに「結構です。」とお断りさせていただきました。
(ごめんなさいね、保険屋さん・・・。)

保険商品も、金融商品も、何においても向こうからやってくるものに、いいものはありません。

中には「悪くないかな」というものもあるかもしれませんが、それは自分で広く情報収集をして、その中で選ぶべきもの。
偶然会社や自宅にやってきた保険会社の中の、そのセールマン(セールスレディ)の勧める商品に加入する必要はありません。

就業不能保険は、私のようにシングルだったりおひとり様だったりする、不安要素の高い人を煽って入らせるにはちょうど良い商品です。

けれど、実際に加入するにあたっては、どのようなリスクにおいて保障してくれて、もしもの場合は免責期間まではどう対処するのか・・・そこまで考えてから加入しましょう(*^-^*)