「資源ごみ回収は命がけ!?」~実際の生保事例18~


資源ごみ回収の当番で、胸痛発!!

自分は健康だと思っていても、ある日突然、病魔に襲われることがあります
それはいつ、どのような形でやって来るか、誰にもわかりません。

私が循環器外来に勤務していたある日、60代の男性患者さんが外来の受付に倒れ込むようにしてやってきました。
総合受付から循環器受付までやって来て窓口に診察券を出したところで、本当に倒れてしまいました。
びっくりした受付スタッフの声で、私は駆けつけました。

じっとりと冷や汗をかいて、受付カウンター下の床でうずくまっています。
本人が息もきれぎれに話してくれたところ、資源ごみ回収の当番で外にいたら、胸が苦しくなってきてしまったとのこと。
そして、8時までのところを早めに抜けて来院したそうです。

私の住む地域では、月に1回びんやカンなどの資源ごみ回収があります。
地域住民が当番制で回収日の朝に分別の手伝いをするのですが(みんなが適当に出さないように)、実施しているのが朝の6時から8時という早朝です。
冬は寒い時間帯に屋外、それも吹きさらしの広場に立ちっぱなしになります。
どうやらその寒さが影響して、胸が痛くなったようです。

すぐ隣にある生理検査室に搬送して、心電図をとりました。
心電図というのは、刻一刻と変化します。
特にこのような急変時は、数分で心電図が変化することもあるのです。
ですから、できるだけ早く心電図をとって状態を確認する必要がありました。

案の定、この患者さんの心電図波形は、狭心症の可能性を示していました。
生命保険と健康状態の関係「狭心症」>でお伝えしたように、狭心症は心筋梗塞の一歩手前です。
もしかしたら、もう心筋梗塞になりかかっているかもしれません

心筋梗塞は完全に詰まってしまった状態ですが、狭心症は一次的に血流の途絶えた状態です。
患者さんは狭心症発作が起こっているのに、総合受付から二階の循環器外来まで階段を上ってきたことで身体に負担がかかり、胸痛がひどくなってしまったのだと思われます。

この時点で、時刻はまだ7時45分。
8時半の診察開始なんて、待っていられません。
私の所属していた循環器の外来は診察をする場なので、心臓の血管の状態を見る心臓カテーテル検査や、緊急対応をするための場所も道具も、スタッフもそろっていないのです。

私は普段は怖い看護師が多くて極力接触を持ちたくないと思っている救急外来に電話をかけ、事情を説明して救急外来に搬送することにしました。
患者さんに接触してから救急外来に搬送するまで、15分かそこらの出来事だったと思います。

3本とも詰まっている“三枝病変”で、緊急手術へ!

患者さんを救急に託した私は、8時半の診察開始時には既に外来患者さんの対応に追われていました。
そして、外来に出ていた医師が、「モニターを付けて」と言いました。

私の勤務する病院の循環器外来では、レントゲンを撮りながら心臓の血管の具合を撮影していくカテーテル検査の様子を、ベテランの先生が外来診察をこなしながらチェックするシステムになっていました。
モニターに映し出されていたのは、私が朝対応したあの男性でした。

「三枝だな」と、先生が言いました。
心臓には、大きな血管が3本あります。
そこから細い血管へ枝分かれてして、心臓全体に血液(に含まれる酸素)を送るようになっています。

先端の細い血管が詰まる分には、心筋への影響は少なくて済みます。
ところがこの男性、3本の太い血管の全てに高度な狭窄を認めていたのです。
外来に倒れこんできたあの時、私の目の前で亡くなっていてもおかしくない状態でした
それを考えると、怖くなりましたね・・・。

少しの狭窄なら、足の付け根から入れたカテーテルで、血管の狭くなった部分を広げる処置をすることができます。
しかし、三枝病変と呼ばれるこの状態はもうカテーテル治療の範囲を超えており、手術の適応です。
急いで循環器の医師から心臓外科の医師に連絡が入り、緊急オペが開始されました。

朝7時45分に受付になだれ込んできた男性は、8時半には心臓カテーテル検査を受け、その1時間後には手術室にいました。
狭くなってしまった部分を人工血管でつなぐバイパス手術を受け、患者さんは手術室からそのままICUへと運ばれました。

カテーテルでの治療をするだけでも、1か月の高額療養費の限度額を超えます。
男性はそのまま心臓外科手術になりましたし、その後もICUでの管理が必要です。
状態が安定しても、心臓リハビリなどを受けてからようやく退院となります。

男性に以前から胸痛などの自覚症状があったのかわかりませんが、ごみ当番に出かけて手術になるとは思わなかったでしょう。
そして、死の淵まで行った上に高額な医療費がかかるようになるとは、思ってもいなかったはずです。

何もないからこその生命保険

この男性のように突然発症して入院・手術となった場合、治療費はどのように払うのでしょうか?
たいていは一旦、現役世代の多くは3割にあたる金額を窓口で支払います。

あらかじめ高度な医療を受けることが予定されている場合は、先に限度額認定証というものを申請しておくと、窓口での負担はその月の限度額までで済みます。
しかし、この男性のように準備する時間もなく治療を受けた場合、限度額に関係なく一度は払わなければならないのです。

限度額を超えた分の医療費である高額療養費は、申請してから戻ってくるまでに3か月ほどかかります。
となると、まずは貯蓄の中から治療費を払わなくてはなりませんね。
家族の中で誰が・いつ・どんな病気を発症するか、誰にもわかりません。
ですから、常に家計には余裕資金が必要なのです。

もしこの男性が生命保険で備えていたら、大助かりですね。
手術もしているし、入院も数日で済むような状態ではありませんから、入院給付金がもらえるとありがたいですね。
入院には、保険の適応されない差額ベッド代や消耗品費もありますし、これらは高額療養費からも対象外とされてしまいますから、実際の自己負担は3割ではないのです

保険金は公的機関の還付金と違い、1か月もかからずに受け取ることができます。
病院の支払いで貯蓄を使い果たしてしまったとしても、高額療養費が戻ってくるまでのつなぎにもなります。

この男性は胸痛で受診しているのに、階段を上って循環器の受付までやって来ました。
ということは、普段は元気なオジサマなのでしょう。
それでもごみ当番がきっかけで、生死に関わる病気を発症してしまったのです。

生命保険というのは面白いもので、健康に不安のある人は、なかなか入れません。
既に健康診断で異常を指摘されていたり、病気を抱えている人が多いからです。
一方で、健康診断で何一つひっかかる項目のない健康な人は、自分の身体に「もしも」のことが起こるとはなかなか考えません。
ですから、生命保険の加入を検討しないものなのです。

病院はできる限りの手を尽くして命を助けますが、患者さんのお金を守ることはできません。
治療費は払えたのでしょうか?
仕事は大丈夫でしょうか?
生命保険には加入していたのでしょうか?
高額療養費の請求は?

私に今同じことが起こったら、どうなってしまうだろう?
育児休暇から戻ったばかりの私は、自分にもしものことがあったらということを、考えずにはいられませんでしたね。

無事に退院して、仕事に復帰できるかな。
子供が独立するまで、守り育てることができるだろうか。
治療費の窓口負担分、生活費の口座に残っていたかな・・・。
定期を下ろさないと足りないかな。
生命保険からの給付金は、いつ受け取れるかな。

大きな病気に突然襲われると、心の準備もお金の準備もできていません。
命がけのごみ当番となってしまったこの男性。
治療や生活をするのに必要な資金はどう捻出したのでしょうか。
病気だけでなく、そちらも心配となってしまいました。

こういう症例に遭遇すると、健康なうちにいざという時の対策を練らなければならないな、と思います。
あなたは最低限の生活防衛資金、そして生命保険、使える社会保障・・・もしもの備えは大丈夫ですか?