「子宮筋腫」の症状は気付かないことが多い

子宮筋腫と医療保険

子宮筋腫は、女性に最も身近な病気

女性特有の病気の一つに、子宮筋腫があります。
子宮筋腫は婦人科疾患の中で最も多く、幅広い年齢層に発症する良性腫瘍です。

自覚症状はほとんどないため、筋腫があっても気づかない人も多いです。
しかし、子宮筋腫の人にはいくつかの特徴となる症状があります。

<あなたも子宮筋腫かも!?こんな症状が出たら要注意>

【1】生理の時の出血量が異常に多い(月経過多)
【2】生理痛、悪心や嘔吐を伴う生理(月経困難症)
【3】不妊
【4】腰痛
【5】頻尿
【6】便秘
【7】手足のむくみ

【1】月経過多と【2】月経困難症は生理のときだけの症状です。
生理に伴う症状は、全くケロッとしている人から重すぎて日常生活にも支障をきたす人まで、個人差の大きい問題です。
それ故に、同じ女性同士でも理解されないことも多々あります。

ちなみに、女性が頭痛薬などの解熱鎮痛薬を常備しているのは、実は毎月くる生理痛のためでもあります。
それだけ生理痛は、程度の差こそあれあって当然というわけです。

【3】不妊と【4】腰痛は婦人科疾患以外の理由から起こることもありますね。
ですから、「不妊と腰痛がある=子宮筋腫」という発想にはなかなか至らないでしょう。

子宮筋腫と関係なさそうな残りの症状【5】頻尿【6】便秘【7】手足のむくみは、筋腫が大きくなって周辺臓器を圧迫するために起こるものです。
しかし、これらも婦人科疾患ならではの症状というものでもなく、立ち仕事をしている女性にとって足のむくみは、同じ状況にある人共通の悩みでもあります。

データ的にも子宮筋腫は女性に最も多い病気とされていながら、その症状はあまりにも漠然としていて、気付かないのが実状です。
そうなると、相当大きな筋腫があっても本人は全く病識のないことも多く、これが生命保険の加入や保険金支払いでおこるいざこざの原因ともなるのです。



足のむくみ、原因は子宮筋腫!? 衝撃のCT画像

「貧血」が生命保険にもたらす影響でもお伝えしましたが、女性に貧血の人は多いので、貧血があるからといって即、子宮筋腫には結びつきません。
健康診断でヘモグロビンがL(Low)となっていても、毎月生理のときに出血しているんだし、当然よね・・・となってしまいます。
ちょっと立ちくらみするかな~程度では、受診しようという気にならないのも事実です。

私が勤務していた血管外科の外来に、ある日「足がむくむ」という主訴で40代の女性が受診しました。
確かに、上半身に対して足がパンパンです。
子宮癌の術後の患者さんによくあるリンパ浮腫かと思ったのですが、女性にはこれといった既往歴はありませんでした。

むくみにはいろいろな原因があるのですが、明らかにこれはちょっと立ち仕事で・・・という範囲を超えています。
明らかに、何らかの理由があってむくんでいます。

初診だったので採血にレントゲン・心電図、下肢の血管エコーなど、少しずつ検査を進めていきました。
大きく動いたのは、採血結果でヘモグロビンが4.8g/dlという結果が出てからでした。
ヘモグロビンは男女で正常値が違い、医療機関によっても基準値に若干の差があります。11g/dlを下限と考えると、この女性は半分以下です。

通常この状態になると、たちくらみといった程度ではなく、息切れなどの明らかな自覚症状が現れます。
しかし、通常貧血はある日突然やってくるわけではないので、身体も順応していきます。
この女性も「やけに疲れやすいな」と思っていたそうですが、それに関して受診をしようとは思っていなかったそうです。

更に、女性から聞いたところによると、貧血は数年前から健康診断で指摘されていたので、毎年のことだと放置していたようです。
女性から貧血に加え月経過多・頻尿という情報を追加で得たところで、CTを撮影しました。

衝撃の結果が待っていました。
そこには、私が今までに見たことのないほど巨大な子宮が写っていたのです。
子宮筋腫による出血で貧血が起こり、筋腫によって膀胱が押されて頻尿が、更に下肢の血管・リンパの流れが停滞して両下肢にむくみが生じたというわけです。
これで全ての症状がつながりました。
女性に現れていた症状は全て子宮筋腫によるものだったということで、診断がつきました。

大きさ・圧迫による症状から、これは明らかな手術適応です。
しかも、手術の前には輸血による貧血の改善(補正)も必要です。
術前の輸血も含めて入院による治療が必要であると判断し、血管外科から婦人科へコンサルトを依頼し、患者さんはそのまま緊急入院となりました。

貧血の理由は何!?発症時期不明だからこそ、もめる原因に

さてここで、この女性がもし医療保険に加入していたらどうなるか考えてみたいと思います。
情報を整理してみましょう。

  1. 子宮筋腫の特徴といえる、過多月経を自覚していた
  2. 健康診断で3~4年ほど前から貧血を指摘されていた
  3. 過多月経・貧血については今まで婦人科受診をしていない
  4. 子宮筋腫とは思わず、下肢の浮腫を主訴に血管外科を受診した
  5. 緊急入院による輸血、状態が落ち着いたところで手術が必要である

この患者さんは多くの女性がそうであるように、貧血という健康診断の結果を放置していました
ちょっとばかし生理が重いから当然かな、と考えたのではないでしょうか。
病的なものだという自覚がなかったので婦人科を受診していませんでしたし、当然子宮筋腫という診断を受けたこともありません。

そして下肢の浮腫がひどくなったということで血管外科を受診し、巨大な子宮筋腫のあることがわかりました。
健康診断で既に貧血はあったものの、それは数年前からのことです。
そうなると、子宮筋腫のせいで貧血があったのか、それとも女性に多い鉄欠乏性貧血によるものだったのか、それを証明することはできません。

もし女性がここ数年の間に「既往歴なし」と申告して医療保険に加入していた場合、入院による治療・手術に対する給付金を受け取ることができるのでしょうか?
貧血といっても正常値をわずかに下回る程度であれば、病気という認識がなくても当然なので、悪意があるとは問えません。

しかし、貧血が子宮筋腫の特徴であることは事実で、「健康診断で数年前から指摘されている」という情報は、医師の記録上に必要な情報として記されています。

実際に女性が医療保険に加入していたのか、入院・手術給付金の請求をしたのかはわかりません。
しかし、この状態はいつの時点から病気だったのかという特定が難しいので、揉めるのかなと思われます。

アフラックの公式ホームページお客さまから正しい告知をいただくにあたってに、下記のような注意事項があります。
『告知義務違反による解除の対象外となる2年経過後にも取消しとなることがあります。またすでにお払い込みいただいた保険料はお返しいたしません。』

これは告知義務違反の内容が特に重大で、詐欺による取消しを理由とする場合なのですが、なにをもって重大なのかはわかりません。

女性にとって貧血は身近な問題であり、また子宮筋腫も身近な病気です。
どちらも程度が軽ければ日常生活に支障をきたすこともなく、受診をしなければ病気という扱いもされません。
本人が自覚していないので、もし生命保険に加入しようとすれば既往歴として告知することもないでしょう。

いつから病気だったのかなんて、本人すら知らないこと。
保険契約後に発症したととるのか、それとも契約前に発症していたはずだととるのか、難しいところでしょう。
だからこそ、生命保険会社は医師に面談を求めて、発症日や診断日などを調査するのですけれど。

このようなグレーゾーンにあたるとき、生命保険会社がどのような対応をするのかは各社によって、また契約によっても違うでしょう。
となると、医療保険は加入しているから安心とは言いきれないのかもしれませんね