「高額すぎる死亡保障」~よくある生命保険のムダ02~

死亡保障と生命保険

不安になればなるほど、保険料は増えるもの

私達は、順風満帆なときには将来に対して不安を抱くことはありません。
何か心配なことが出てくると、死んだあとのことや病気にかかった時の費用、教育費・老後費用など、とたんに悪い方へと考えが及んでしまうのです。
では、どんなときに私達は、どんな不安を抱くのでしょうか?

<将来が心配になるのは、どんなとき?>

  • 健康診断で悪いところを指摘された⇒病気になって働けなくなる?
  • 病気になった⇒高額な医療費がかかる?
  • 転職した⇒収入が下がる?
  • 近い人が病気や要介護状態になった⇒自分は大丈夫か?
  • 子供が生まれた⇒教育費を払いきれるだろうか?
  • 仕事が忙しすぎて、心身ともに限界⇒いつまで働き続けられるだろうか?
  • 住宅を購入した⇒ローンを完済できるだろうか?

女性は特に、出産前後でいろいろなことを考えると思います。
出産前に考え込んでしまって陥るのが、俗に言うマタニティーブルーですね。
これは、子育てそのものの心配だけではないと思います。
子供をしっかり育て上げるだけの経済力を維持できるかという心配や、子供を抱えても自身のキャリアをステップアップさせることができるか、という心配なども含まれているのではないでしょうか。

小さな子供を抱え、働きに出ることができない。
子供が病気がちで、いつまでたっても職場復帰できない。
育児を協力してくれる人が周囲にいないので、仕事をセーブせざるをえない。

子供をもつと、このように不安がむくむくと頭をもたげて、自分の中でどんどん増大していくのです。
そうなると、過剰な備えに走りがちになります。
まだ病気で亡くなる可能性が低い30代の夫に、必要以上の保障をつけるようになるのです。

恐らく、夫婦で生命保険の必要性を強く感じているのは、妻の方だと思います。
どんなことがあっても、大事な我が子に貧しい思いをさせたくない、大学には絶対に行かせてあげたい、マイホームを手放すなんて絶対イヤ・・・そんな思いを抱くのは、家庭を守る妻の側。

ですから、多くの家庭では夫を被保険者として生命保険に加入しているでしょうし、夫からすると無駄に感じるほど、過剰な保障額をつけていることがあるのです。

私自身、まさにその心境になりました。
産休と育休は、結婚後もフルタイムで働き続けていた私が、ようやく一息つけた時期でした。
その時点で看護師としての経験・勤務年数は7年経っていましたから、同世代の女性の中ではそこそこの年収がありました。

しかし、産休・育休に入ると、毎月の収入は減ります。
それでいて、子供がらみの出費が増えるので毎月赤字。
「もしも」についても考えるようになります。

自分がフルに働くことができればこの子1人くらいは養うことができるけれど、まだ産後まもない今、夫に何かあっても働きに出られない。
そうなったら、私と子供はどうなるのだろう?
自分一人の収入で生活費とマイホーム(私名義で購入していたので)に教育費、全てを捻出することができるだろうかと。

そうなると、考える時間はあっただけに、どんどん不安は増大します。
子供が生まれて幸せなのと同時に、子供を持った責任と不安も生まれてしまったのです。
そうして私は、新たな保険に加入したのでした・・・。

まだ30代の私が言うべきことではないかもしれませんが、人生は常に順風満帆とはいきません。
いいときもあれば、悪いときもあります。
もっというと、常に安泰ということはありません。
「不確実なことばかり」ということだけが、確実なのだと思います。

どうしても、メンタル的に落ち込んでしまう時期はあります。
私の場合は、産休・育休中だけではありませんでした。
離婚したときや持病が悪化したとき、あらたな病気が見つかったとき、転職したとき・・・いろいろな場面で不安が押し寄せました。
そんなときには、どうしても心細くなるし、生命保険に頼ろうと思ってしまうのです。



必要な保証額を考えよう

あなたが今入っている生命保険は、万一のときの死亡保障額をいくらにしてありますか?
本当に、その額は必要でしょうか?
もっと低くしたら、リスクが高くなってしまうのでしょうか?

おひとり様は、亡くなったあとにお金を残すべき人がいませんから、死亡保障は不要です。
自分の葬儀費用くらいの貯蓄があれば、親や兄弟に迷惑がかかることはありません。

子供のいないDINKS夫婦も、基本的に死亡保障は不要です。
夫も妻も、相手に何かあったとしても独身時代に戻るだけ。
自分の生活する分を稼ぐだけでよいのですから。

亡くなったあとは、ある程度まとまった額のお金が必要なのは事実。
病院への支払に葬儀・納骨と続きますから。
入るお墓がない・まだお墓を買っていないという場合には、葬儀費用に加え墓の購入費用も必要になりますね。

住んでいる土地柄やどんな葬儀をあげるかにもよりますが、数百万円あればなんとかなります。
(実際は、お墓を購入したあとも檀家としてお寺に納める費用がたびたびあるのですが、ここでは触れずにおきます。)

おひとり様やDINKS夫婦ならば、多少の贅沢をしていても数百万円の貯金はそんなに苦労せずに貯めることができるはず。
定期預金にして手をつけなければ、まさにこれが「死亡時の保険」になります。

悩ましいのは、子供がいる場合です。
持ち家かどうか、妻が仕事をしていたか、そして子供の人数によっても死亡時に必要な保障額は違います。
子供のいる男性が死亡した場合の生活について、いくつかのパターンを例に考えてみましょう。

持ち家の場合

夫名義で住宅ローンが組んであれば、団体信用生命保険に入っているので、夫の死亡後にはローンを払う必要がなくなり、その家は妻のものになります。
住む家に困らない分、賃貸住まいに比べて必要保証額は抑えられます。
マンションの場合には、管理費や修繕費などがかかるので注意が必要です。
これらが負担なら、賃貸に引っ越してマンションは売却し、売却益を将来の進学費用にとっておけば、教育費は安心です。
そして、妻が働きに出てそのとき生活していく分の生活費を稼ぐことができれば、夫の死亡保障に何千万もかける必要はありません。

ただし、子供の人数が多い場合や売却益が少なかった場合には、これだけでは不足するかもしれません。
また、共同名義でマイホームを購入してそれぞれがローンを組んだ場合(ペアローン)には、妻の分は残るので注意が必要です。

賃貸の場合

賃貸の場合には団体信用保険がありませんし、現金化できるマイホームもありません。
これからも、家賃の支払いは続きます。
ただし、母子家庭になれば公営住宅を格安で借りられることもありますし、少し小さい間取りに引っ越すことで、費用を抑えることができます。

管理費や修繕費の請求を受けることがないし、固定資産税もかかりません。
賃貸の金額によっては、持ち家を維持するよりも安くすむかもしれません。
この場合、生活費と教育費には何らかの備えが必要でしょう。
貯蓄と自分のこれからの収入で不足する分が、必要な死亡保障の額になりますね。

妻が専業主婦の場合

それまで妻が専業主婦でいた年月が長ければ長いほど、夫にもしものことがあってもいきなり生活費を稼ぐことは難しいでしょう。
私の知り合いの女性は、10年間のブランクを経て職場復帰する際に、半年間パートから始め、それからフルタイムの正規職員になりました。

男性や、私のように出産後もずっと働き続けている人にはわかりにくいかもしれませんが、一度家に入ってしまった人にとって、丸1日家をあけて仕事に出たり家族以外の人に接してお金を稼ぐということは、精神的にも身体的にもかなりハードルが高いのです。

専業主婦の家庭は、いざとなったら妻が働けばいいと言いきれません。
実際に、キャリアを積んでこなかった人が急に働きに出ても、どれだけの額を稼ぐことができるでしょうか?
この場合には、安易に死亡保障を下げられないかもしれません。

妻がバリバリのキャリアウーマンの場合

出産後も職場復帰して妻がバリバリに働いている場合には、将来の不安は比較的小さいと思われます。
ですから、夫へ大きな死亡保障をつける必要はないでしょう。

ただし、自分一人で子供も育てて(家事含む)仕事も・・・となると、今までと同じだけ仕事に打ち込むことができるかどうかはわかりません。
貯蓄額にもよりますが、葬儀費用+子供の教育資金分をいくらかは備えておく方がよいかもしれませんね。

注意して欲しいのは、妻がバリバリに稼いでいる場合、妻の側にも保険が必要かもしれないことです。
マイホーム購入も教育費も妻の収入ありきで生活していた家庭では、妻に何かあった場合の打撃が大きくなります。
また、母子家庭に対する制度に対して父子家庭に対する制度は厳しいことが多く、男性が給与収入を得ている場合、なかなか公的な補助の対象にはなりません。

夫が亡くなったあと、妻が実家に身を寄せることができるかどうかでも、保証額は変わります。
賃貸住まいの人が実家に戻れば、住居費が抑えられますし、子供を親に預けられればその分働くことができます。

また、今必要な保障額と10年後に必要な保障額は違います。
子供が小さいうちには高額な保障が必要ですが、末子が大学を卒業して独立してしまえば、夫婦は若かりし頃のDINKS夫婦のときと同じ生活に戻ります。

ただ不安だからといって高額な保障を付けてしまうと、高額な保険料を支払うことになってしまいます。
あなたの家庭は、「もしも」をあまりに考えすぎるせいで、今の生活を圧迫させるほどの保険料を支払ってはいませんか?

よくある家計の見直しでは、まず生命保険と子供の習い事を削ることが多いです。
確かに、見栄で通わせているバレエ教室には意味がありません。
しかし、何を大事にし、何にお金をかけるかは家庭によって違います。
子供1人1人でも違います。

過剰な生命保険は、過剰な不安から来るもの。
つまり、自分に自信がないから。

私自身、シングルペアレントですし、子供はまだ小学生ですから、これからどれだけの教育費がかかるかわかりません。
おまけに持病を抱えているので、いくら看護師といっても夜勤をガンガンやって稼ぐことは、身体的にできません。
子供に遺す持ち家もありません。
マンションにかかる維持費がもったいなくて、離婚後に売却してしまったからです。

ですから、私は子供のために生命保険に入っています。
しかし、生命保険以前に、もっと大切なことがあるのです。

生命保険に頼る前に、できること

一般的な家庭が夫のもしもに備えるなら、生命保険以外にも方法はあると思います。
まず、妻が「稼ぐ力」をつけること
自分で年収500万円なり700万円稼げる自信があれば、自分の力で子供を養っていくことができますから、過剰な保障は不要です。
稼ぐ力があることは一番の保険であり、同時に安心にもなるのです。

もう一つの方法は、生活を大きくしないこと
毎月の生活にいくら必要かは、各家庭によって違います。
我が家はマイホームもマイカーも処分し、小さな賃貸アパートで子供とほそぼそと暮らしています。

毎月の固定費を抑えることで今の生活が楽になり、その分マンションを所有していたときよりも貯蓄ができるようになりました。
私が病気で働けなくなったとしても、生活費をかなり抑えることができます。

「夫(もしくは自分)に何かあったら、今までと同じ生活ができなくなるかもしれない」という不安が、過剰な死亡保障の原因です。
確かに、備えは必要です。
しかし、稼ぐ力と生活費を抑えて「なんとかなる」と思えたら、必要な保障額はぐっと下げられるのです。

保険会社は不安をあおって保険に入るように宣伝します。
しかし、自分の軸をしっかりもって、「私はこれだけあれば、大丈夫」と思えるようになることが大切です。
生命保険は、保障額を高くすればするほど、支払う保険料も高額になります。
もしもの不安に対していくら払うのかについては、生命保険が「人生で2番目に高い買い物」になるかどうかはあなた次第!?でもお伝えしていますが、自分次第。

生命保険に加入することで安心して暮らせるのは、有難いことです。
しかし、保険料が今の生活費の中で締める割合が高すぎると、今を楽しむことができません。
節約節約・・・と心に余裕がないのに、なぜか生命保険だけは毎月5万円以上払っている家庭もあります。

死亡保障はいくら必要か、だけを考えても答えは出ません。
自分にはどのくらい稼ぐ力があるのか。
どのくらいのお金があれば、毎月暮らしていけるのか。
公的な補助は、何が受けられるのか。

様々な角度から考えて、自分にとって必要な保障額を導きだしましょう(*^-^*)