「むちうち」は誰にでも起こりうるからこそ保険が活きる

むちうちと自賠責保険

交通事故を起こしたら、その賠償や修理はどうなるの?

車社会において、交通事故は避けたくても避けられない事象になっています。
人生において一度も交通事故に巻き込まれないというのは、かなりラッキーなことかもしれません。
交通事故は、自分が注意していても向こうから“やってくる”ものでもあるからです。

もしあなたが車に乗っていて後ろから追突され、車が破損した上にむちうち症状が出てしまったら、車の修理や病院の受診費用はどうなるのでしょうか?

車に乗るには、基本的に自賠責保険に加入しているハズです。
(加入していない「無保険運転」は違法ですが、現実には無保険のまま運転している人もいます。)
自賠責保険は、どのような制度でどこまでカバーしてくれるものなのでしょうか。

国土交通省の自動車総合安全情報の自賠責保険ポータルサイトで、以下のように自賠責保険の特徴がまとめられています。

自賠責保険
(自賠責保険ポータルサイト 自賠責保険について知ろう!より抜粋)

自賠責保険は任意加入の自動車保険よりも補償内容は薄いのですが、被害者1名につき120万円を限度に支給されます
ただし、物損については対象になりません。

10:0の割合で相手に過失がある場合は、破損した車の保障は相手が任意加入の自動車保険で支払うか、全額自己負担で支払うことになります。
車両保険に加入している場合には、実質負担はゼロで修理をすることも可能です。

ただし、この場合には次の契約更新時に等級が下げられて保険料が高くなりますので、正確に言うと自己負担ゼロではありません。
いきなり修理代何十万円を負担しなくて済みますよ、ということですね。

さて、車の修理についてはお互いの自動車保険で話が済んだとしましょう。
過失割合によって修理する額の負担も変わりますが、そこはあなたも納得済として、次に事故後に発生したむちうちについて考えてみましょう。

事故の上にむちうちでも、通院が認められないってホント!?

交通事故を起こすと、高頻度で起こるのがむちうちです。
むちうちは、頭が大きくゆれたときに首(頸椎)が支えきれずに起こる障害で、後ろからの追突事故などが発症しやすいようです。
むちうちと生命保険は、切っても切れない関係にあります。

まず、事故を起こした際はその後の訴訟や賠償問題のことも考え、整形外科を受診してしっかりと画像診断を受けることをお勧めします。
そこで頸椎を始め、外傷のある部位や痛む部位の写真を撮ります。
そして、診断の結果骨折や脱臼はどこにも認められない、と言われたとしましょう。

でも、あなたには首から頭にかけてのズーンという鈍いくて重い痛みがあるとしましょう。
もしかしたら、痺れも出ているかもしれません。
しかし、医師の診断は問題なし。
これがむちうちなのです。

正確にいうと問題がないのではなく、整形外科的に積極的に治療するようなものはない、ということです。
このような場合にはたいてい、湿布や痛み止めが数日分処方されて終わります。
初回受診時に既に痺れが出ていたり明らかに頭部を激しく揺らしたような形跡があれば、頸椎を保護する「頸椎カラー」というものを首に捲いて、安静と言われるかもしれません。

ところがですね、むちうちというのは事故後すぐに現れるとは限らないのです。
これがまたむちうちの厄介なところなのですけれど。

翌日・翌々日になってから症状の出た場合や、少し重い・頭が痛いという程度では、
「本当に事故によるものですか」
「本当にそんなに痛いのですか」
「仕事くらいはできるのではないですか」

ということを、相手側の保険会社から詰問されることがあるのです。
相手側の保険会社はできるだけ賠償にかかる費用(治療費等)を減らしたいと思っているので、なかなかむちうちによる通院や休業を認めたくないのです。

むちうちは、画像による明らかな異常が認められません。
そして、キズが塞がっていくようには修復過程が目に見えません。
症状は何か月も続くことがありますので、終わりがはっきりしないのです。

ですからむちうちは自己申告の世界となり、<生命保険と健康状態の関係「うつ病」>で紹介したような精神疾患と同じような扱いを受けてしまうこともあるのです。
実際、わざと整骨院などに長期間通って休業補償まで受けようという輩もいるので、あながち保険会社を悪くは言えません。
(世の中、性善説では生きていけないものですね・・・。)

とはいっても、本当にむちうちで頭が痛いし日常生活にも支障が出ているんだけど・・・という場合、困りますよね。

ただでさえ車が破損して次の自動車保険の保険料は値上がりが確定しているのに、仕事に支障まで出てしまうのでは、身体だけではなく精神的にも大きなダメージです。
うつ病などの精神疾患同様に、画像データや目に見えない身体のダメージというのは、なかなか他人に理解されないものなのです。

むちうちは身体の痛みや休業補償云々よりも、本当に辛い症状があるのにそれをわかってもらえないことの方が辛く悲しいことかもしれません。

むちうちは、自動車事故だけではない!?

ここまで、自動車事故におけるむちうちについてお伝えしてきましたが、実はむちうちを起こすのは自動車事故に限りません

先日、私は趣味のロードバイクで事故を起こしました。
その時のケガについては、<経験した実際の生命保険関連の事例20~「“もしも”の事態は病気だけとは限らない!?」~>でお伝えした通りですが、ここで私は傷害保険のお世話になりました。

歩行者を相手にした事故のために加入していた傷害保険で、自分の治療費を保障してもらうことができたのです。
このときは手のケガが主だったのですが、キズが治ったあとも神経を痛めたようで、キズが治ったあとの通院も数回ありました。
治療費だけではなく、通院日額1500円まで受け取ることができて、大変ありがたかったです。

実は私、この事故のときに軽いむちうちになっていました。
事故を起こした翌日の朝一番で整形外科を受診したのですが、そのときは全くむちうちらしい症状がなく、3日後に再診と言われました。

ところが、帰宅して午後になったら肩から首・頭にかけて鈍くて重い痛みが出て来ました。
最初はパソコンの使いすぎか?と思いましたが、大した時間使用していなかったこともありしばらく考え、むちうちに思いあたりました。

ただ、もう診察を終えたところです。
もう一度整形外科にかかって時間がかかるのも嫌だし、ものすごくひどい症状でもないので、恐らくレントゲンでも何もないと言われ、カラーも不要となるのがオチだろうなあ・・・と判断しました。
できるだけ首を動かさないように安静を心がけたこともあってか、症状がそれ以上ひどくなることはありませんでした。

結果的に、次の受診までにむちうち症状は治まったので診察時にあえて言うこともなく終わりました。
ですから、私のカルテに首の症状は記載されていません。

けれど、もし受診時に既にむちうち症状があったらどうなったでしょうか?
程度にもよりますが、頸椎カラーを巻いたり、あまりにも痛みがひどい場合には同じ整形外科の中にリハビリ施設も設置されていたので、こちらへの通院があったかもしれません。

私の加入している傷害保険では3か月に満たない場合と手術をしていない場合には診断書は不要とのことでしたので、むちうちの程度がもう少しひどかったら、指のケガと神経損傷だけではなくてむちうちによる通院も続いたかもしれません。
その場合には、年額2万円ちょっとの傷害保険でリハビリまでカバーしてくれていたことでしょう。

むちうちは誰にも起こりうるもの

自動車事故によるむちうちのほとんどは、自賠責保険と任意加入の自動車保険で対応します
しかし、場合によっては保険による治療費の保障を受けられずに自腹で整体に通うこともあれば、私のように偶然加入していた傷害保険で保障してくれることもあります。

おなじむちうちでも、状況によっては受けられる保障は変わります。
首というのは本当にもろいもので、ほんの少し圧のかかり方が変わるだけで一生寝たきりになるような障害を抱えたり、場合によっては頸椎損傷によって命を落とすケースもあります。

むちうちで済んでよかったとは、当事者は思えるものではありません。
しかし、仮に金銭的保障を受けられなかったとしても、手足が動かせる・生きている、それだけでラッキーと言えなくもないのです。
実際、私はたった一度の交通事故で命を落とした人も、寝たきりになった人も見て来ました

今あなたが事故後のむちうちでお悩みだったとしたら、むちうちのせいで・・・と思うよりも今生きていることをありがたいと思う方が、精神衛生上よいと思えませんか?

私達の生活に、車は欠かせないものとなりました。
私のように自家用車を持たない身でも、公共交通機関のバスが事故を起こすことはありえます。
実際、2017年10月にはバスの運転手が走行中に意識消失してあわや大惨事・・・という事故(参考:HUFFPOST)も発生しました。

むちうちは誰にでも起こりうるもので、車に乗るのも乗せてもらうのもそれ相応の覚悟が必要、ということでしょうね。
いつ・どこで・誰に“持ってこられる”災難かわからないのです。

私も交通事故では苦い経験がありますが、辛うじてこれまで大きな後遺症を抱えたりトラブルになるようなことはなく済みました。
けれども、事故が怖くなって車を手放しました

現在はたまに実家の車を借りて運転することはありますが、ほとんどハンドルを握ることはありません。
歩きと自転車、それに公共の交通機関をメインとした移動手段にしてから、車関連の支出がぐっと減りました。
それだけ日々支払うガソリンだけではなく、自動車保険や点検・車検、そして税金にかかるお金が高かったのだということですね。

車に乗るのであれば、任意保険を始めとした維持費がかかります。
この分の金銭的負担も、事故の可能性と共に受け入れなくてはいけませんね。