「水虫」がもたらす保険への影響

水虫と生命保険

水虫なんて、病気じゃないよね!

知らない人はいないくらい身近で、日本人に多い水虫。
日本は湿気の多い気候と生活習慣により、水虫の患者は老若男女問わず大勢います。
だからこそ、水虫は「病気」と認識されていません。

水虫の原因菌は、「白癬菌」というカビの一種です。
カビというと食品につくカビをイメージするかと思いますが、「ジメジメしたところ」を好むのは白癬菌も同じ。

突然ですが、あなたは水虫予備軍ではないでしょうか?
下のリストに当てはまるものがあったら、要注意です。

<あなたも予備軍!?水虫になりやすい人の特徴をチェック‼>

  • 毎日、長時間靴を履いている
  • 同じ靴を毎日履いている
  • 他人と靴を共有している(職場での長靴など)
  • ストッキングを履いている
  • 汗をかきやすい
  • 家族に水虫の人がいる
  • 自宅で各種マット類を使用している

    (バスマット、キッチンマット、玄関マット、トイレマットなど)

少しギクッとしたかもしれませんね。
日本では靴下と靴を履いて仕事に行くことは、当たり前の生活習慣になっています。
玄関やトイレにマットがある・・・これも当たり前の光景です。

ストッキングを履いている女性も多いですけれど、これもよくありません。
ストッキングや化繊の靴下は、綿よりも汗を吸収しません。
どうしても、靴の中でジメジメしてしまうのです。

そして1日中靴を脱ぐことなく仕事をして、翌日もまた同じ靴で出勤する・・・ごく普通のことですよね。
けれども、靴を使用しないのが夜中だけでは、湿気はとれません。
平日は毎日同じ靴を履くということだけでも、立派に水虫予備軍に入ってしまうのです。

水虫治療は根気が必要です。
部位によっても違いますが、特に爪白癬(爪の水虫)の場合は、きれいな爪が下から出て来て、全て生えそろうまでが治療です。
足の爪は伸びるのが遅いので、治療に1年以上かかる人も珍しくありません。

また、一度治っても同じ生活習慣を送っていると、繰り返し白癬菌に感染してしまいます。
無治療の家族がいる・他人と靴を共有している場合、再感染の可能性は高くなります。

「胃が痛い」とか「頭が痛い」は職場で言えても、「水虫です」とはなかなか言えないですよね。
水虫も立派な皮膚科疾患なのですが、どうしても“不衛生でオヤジくさい”ので、とくに若い人は受診したがりません。

そのため、ドラッグストアやネット通販で白癬治療薬を買っている人も大勢います。
しかし、中には有効成分を十分に含まないものや、薬によるかぶれなどの問題もあります。
まずは、水虫が病気であるという正しい知識を持つことが、水虫治療の第一歩と言えるでしょう。

では、正しい水虫の情報は、どこで手にいれたらよいでしょうか?
日本皮膚科学会 皮膚科Q&A白癬とは何ですか?に、詳しく載っていますので、1つずつQ&Aを読み進めると良いかと思います。



たかが水虫で骨が溶ける!?

上でお伝えした日本皮膚科学会のQ&Aの中で、ひとつ怖い質問があります。
Q30足白癬で死亡することはありますか?
ここに、水虫が放っておいてはいけない病気であることが書いてあります。

結論からすると、Q30の回答は「水虫で死亡することはない」としていますが、「蜂窩織炎(ほうかしきえん)などの細菌感染症をおこすことがある」とも述べています。
むやみに恐怖心を植え付けないためだとは思うのですが、私は重要な前提条件が抜けていると思います。
それは、「基礎疾患がないならば」です。

私が実際に体験した、水虫の怖ーい症例をご紹介しましょう。

ある40代男性が、水虫があると皮膚科を受診しました。
診察台に足を出す時点で、かなり白癬菌の繁殖しやすい環境であることがわかりました。

  • 足首まですっぽり覆うタイプの、合成皮革のスニーカー
  • かなり汚れている(毎日履いてそうで、使い込んでいる)
  • 靴下が汚れている

“いかにもありそう”なこの男性、衝撃の事実が待っていました。
なんと、足の甲(足背)にあるキズが、足の裏(足底)まで貫通していたのです!!

ヒエーッ(‘Д’)
私も初めて見ました・・・。

どういうことかといいますと、この男性、水虫を何年も放置していました。
そこへ足にタコができてしまい、自分で削って処置をしたため、足の裏にキズができてしまいました。
その傷口から白癬菌が入り込んで蜂窩織炎を起こし、少しずつ足の肉を溶かして甲にまで達し、ついには貫通してしまったのです。

甲側の傷口から水を流して洗浄すると、裏から水が出てくるという具合でした。
レントゲン写真でも、一部骨が溶けていることがわかりました。
たかが水虫が、骨を溶かすんですか!?( ゚Д゚)
ビックリでしたよ・・・。

なぜ、たかが水虫がこのようなことになってしまったのでしょうか?
私がQ30の回答には重要な前提条件が抜けている、とお伝えしたことにつながります。

この患者さんはひどい糖尿病で、それも無治療でした。
本来7を超えたら完全な糖尿病よね!というHbA1cの数値が、なんと14を超えていました。

糖尿病が怖い理由は、合併症にあります。

<糖尿病の3大合併症>

  • 網膜症⇒失明する
  • 腎症⇒人工透析なしでは生きられなくなる
  • 神経障害⇒痛みや知覚がなくなる

3大合併症である神経障害のせいで、男性は痛みを感じられなくなっていました。
そのため、骨が溶けて足裏のキズが甲を貫通するまで放っておくことができたのです。
当然ですが、健常な人は痛くてここまで放置できません。

糖尿病は、血管をボロボロにする病気です。
人間は血管を通って全身に血液を巡らせていますから、その通り道が悪ければ、キズ自体の治りも時間がかかってしまいます。
とても外来通院で対処できるレベルではなく、入院となりました・・・。

たかが水虫で形成外科手術!

水虫と傷の組み合わせだけでも、蜂窩織炎という炎症を起こす病気にかかる人はいます。
程度が軽ければ、外来通院で治療することも可能でした。
しかしこの男性の場合、いろいろな悪条件が重なってしまいました。

  • 無治療の糖尿病(による神経障害)
  • 水虫(白癬菌)
  • タコ
  • 傷(タコを自分で削ったときにできたもの)
  • 骨が溶けるくらいに進行した傷

こうなるともう、入院治療しか方法がありません。
傷口の治療だけでなく、3食の管理と血糖測定・インシュリン導入・栄養指導・・・と、入院中に糖尿病の教育も兼ねました。

傷口は、洗浄と抗生剤の治療だけでは済みませんでした。
入院して数日後、医師達のカンファレンスの結果、中の汚い部分を削りとってしまわなければ、(デブリードマンといいます)きれいな皮膚が盛り上がってこないだろうということになりました。

そして、形成外科で足を開いて悪い部分を取り除く手術を行いました。
局所麻酔で済みましたから、手術としては小さい方です。
しかし男性は、このあと2週間近く傷口の処置が必要となりました。

入っておかなければ、備えられるものも備えられない

たかが水虫、されど水虫。
今回ご紹介した症例では、たかが水虫のせいで、2週間以上の入院と形成外科手術を受けることになりました。

やっとここで、生命保険の話が出てきます。
まさか本人も、水虫やタコが原因で足の骨が溶けたり、足に穴が開くとは思わなかったでしょう。
だからこそ、「もしもの備え」なのです。

本当は、健康診断で異常を指摘された時点で受診するべきですし、水虫もタコも自己流の処置をする前に受診すべきでした。
日頃から食事バランスに気を付けて適度な運動をこなし、普段履きの靴は2~3足でローテーションしていたら、違っていたでしょう。

何かしらの症状が出たり、健康診断で指摘を受けてからでは、生命保険に加入することは難しくなります。
入ることができても、特約としてかなりの条件を付けられたり、割高な上に保障の少ない無制限型になる可能性もあります。
(私のイタイ経験を、「病気があると、生命保険の加入は不利!!」~実際の生命保険関連の事例09~でお伝えしています。)

実はこの男性、しっかり生命保険に加入していました。
(おかげで先生は何通も診断書を書くハメになったし、保険会社からの面談まで申し込まれました・・・)

HbA1cが14もある人が、普通の医療保険に入れるとは思えません。
また、数年前から健康診断でも予備軍ではなくて糖尿病と指摘されていたので、かなり前に加入したものと思われます。

現在40代半ばという男性の年齢を考えると、40代前半から糖尿病は始まっていたと思われます。
ということは、生命保険に加入したのは男性が30代、もしくは20代の頃だったのではないかと推測できます。

まさか5年・10年後に、水虫が原因で入院給付金と手術給付金を受け取るとは、思っていなかったでしょう。
10年後に、思い描いていたキャリアから外れるとも。

たかが足の治療でキャリアから外れるの!?と思ったでしょうか。
実はこの男性は、今回のキズが治ってめでたしめでたし・・・ではないのです。

今回の入院や外来通院で、かなりの期間仕事に支障が出ました。
神経障害の状態はひどく、これからも少しのキズが入院コースになってしまうリスクがついてきます。

また、糖尿病がかなり進行しており、上に挙げた3大合併症である腎症が進行しています。
コントロール次第で遅くすることは可能でしょうけれど、10年後には人工透析を導入しているかもしれません。

生命保険と健康状態の関係「糖尿病」>で詳しくお伝えしていますが、糖尿病になると、生活上でいろいろな制約が出てきます。

  • 外来の定期通院
  • 傷やイレギュラーな出来事があった場合の、平日日中の通院や入院
  • 人工透析 (週3回、半日以上つぶれます)
  • 食事制限(付き合いでの食事が難しい)
  • 仕事中のインシュリン注射、低血糖の危険性

これらを、まだまだ働きざかりの50代男性の身に起こると、1人分の仕事をフルにこなすことが難しくなります。

働き方は多様化していますから、仕事がないとは言いません。
しかし、男性が当初頭に描いていたキャリアからは外れた、と言えるでしょう。

将来はどうなるか、誰にもわかりません。
まさか水虫で入院+手術を受けることになるとは、誰も想像しません。

世の中には、保険で備えられる「もしも」と、備えられない「もしも」が存在します。
しかし、入っておかなければ、保険で備えられるはずの「もしも」すら備えられません。
この男性の場合は、まだ病気のない頃に加入した生命保険が、身を助けてくれる結果となりました。

まだまだいいや。
そう思っているあなたも、生命保険の入り時、考えてしまいますよね?
入らなければ、守られるべきときにも守られないのですから。