めまいって、どんな病気?
めまいとは、平衡感覚がとれなくなって身体が上下左右に揺れる状態をいいます。
「身体がフワフワする感じ」や「天井がグルグル回る」など、症状にはいくつかのパターンがあります。
比較的私達の生活に身近なものなので、軽いめまい程度では病院に行くことはあまりないでしょう。
私の経験上、天気の崩れるときなどは、低気圧の影響でめまいを訴える患者さんが増えますね。
また、疲れ気味だったりストレスのかかっている状態の方も、起こしやすいようです。
一般社団法人日本神経学会ではよくある症状 「めまい」のページ内で、
- 耳から生じるめまい
- 脳から生じるめまい
- 老人に多いめまい
の3つに大別して説明しています。
耳鼻科領域のメニエール病などは、耳にしたことのある病名ではないでしょうか?
多くが命に問題のない良性のものなので、点滴をして内服薬を処方して帰宅してもらうことが多いのですが、かといってたかがめまいとも言えないのが怖いところ。
しかし、めまいにはいろいろな原因があり、場合によっては命を落とすことにもなりかねないのです。
脱水症かと思ったら、まさかの脳梗塞で緊急搬送!
私が経験した、めまいに関する戒めとなる症例をご紹介しましょう。
8月の30度を余裕で越すほどの暑い日、40代の男性が嘔吐を主訴に外来に飛び込んできました。
作業服姿だったので、私達は現場作業をしていて熱中症になったかな・・・と推測しました。
実際、本人も「熱中症だと思う」と言っていたため、私達はまず点滴を行って脱水の補正を行うのと同時に、腎機能の障害がないかどうか採血で調べることにしました。
採血結果は意外にも脱水を示す兆候すらなく、ではこの人はなぜこんなに大変そうなのだろう?となりました。
脱水ではないのなら、この嘔吐は何によるもの?
診断がつかないためとりあえず、頭のCTを撮りに行くことにしました。
男性はベッドから起き上がると「めまいがする」と訴えました。
しばらくベッドで休んでいたので頭位変換性のめまいだろうと判断し、車椅子で検査にいきました。
しかし男性は、めまいに加えてまた嘔気を訴え、CT撮影後に嘔吐してしまいました。
意識レベルにも支障が出ているように感じます。
他の看護師を応援に呼び、ストレッチャーにうつして外来まで戻ることにしました。
男性は、来院時よりも明らかに状態が悪くなっていました。
私は、男性の呂律が回らなくなっている(活舌が悪くなっている)ことに気づきました。
更に、時間の経過とともに会話の最中に言葉が途切れてしまうようになり、片方の腕も動きにくくなってきました。
これはただの脱水なんかじゃない、「頭だ」と直感しました。
CTの結果、男性は小脳梗塞を起こしていました。
小脳は平衡感覚を司る場所なので、めまいも嘔気・嘔吐も起こします。
男性の症状と矛盾しません。
このとき脳外科医が不在であったことと男性の年齢も考慮し、医師は専門機関での治療をすることが望ましいと判断しました。
CT撮影後30分も経たずに、近隣の総合病院へ緊急搬送となりました。
男性がその後社会復帰を遂げたのかどうかはわかりません。
この症例から私達は、めまいを「たかが」と思ってはいけないし暑いからといって熱中症と安易に考えてはいけない、と戒めたのでした。
良性のめまいも、入院治療をすることがある!?
男性のように、本当に命に関わるめまいなら当然入院治療を要します。
けれども、低気圧のせいとか疲れといった良性のめまいでも、実際は入院となるケースがあります。
めまいというのは、全く経験のない人にはわからないものなのですが、本当に辛いものなのです。
がんのような悪いものでないことはわかっていても、実際には起き上がれないので仕事どころか家事もこなせない、トイレも這って行く状態になります。
起き上がること自体がめまいをひどくすることもあるし、嘔気を伴うので食事がとれなくなることもあります。
たいてい、食事がとれなくなると水分摂取も減ります。
そして脱水によるめまいも引き起こし、悪循環に陥ってしまうのです。
最近多いおひとり様は、このように体調の悪いときに助けてくれる人が家の中にいません。
食事や飲み物の用意だけでもしてくれればなんとか摂れるのに・・・というくらいまで良くなっても、自分で買いにいくところからしなければならないとなると、億劫になってしまいます。
脱水状態では起き上がることが困難になりますので、余計に寝たまま起きられなくなります。
高齢者は特に予備力が少ないので、ほんの少しのめまいから本当に起き上がれなくなって1人で家の中に倒れていたところを近所の人に発見された・・・ということもあります。
いくら良性のめまいでも、誰も身のまわりのことをしてくれる人がいないことがわかっていて帰宅させるわけにはいかず、高齢者の独り暮らしの場合には社会的入院をとることもあります。
めまいは「たかがめまい」と、他人には軽く受け取られがちです。
しかし、起き上がれないような状態が何日も続くことだって珍しくありません。
若い人でも、週の始めにめまいが起こってしまうと、その週は出勤できないこともあるのです。
数日の病気休暇・・・収入を保障してくれるものは何?
ではここで、あなたが良性のめまいで月曜から金曜までの5日間、ウイークデーの全てを休んでしまったとしましょう。
最初の3日はあまりにも状態が悪く、水分も摂れないので入院したと過程します。
入院3日、自宅療養2日分の収入を確保するために、どんな制度が使えるでしょうか?
【1】有給休暇
【2】生命保険の入院給付金
【3】傷病手当金
私なら、この順で検討します。
突然の病気による休みを保障してくれる制度としては他にも、高額療養費があります。
めまいの治療は高額療養費の適応になるほどの金額は発生しないことが多いので、今回は選択肢から外しました。
高額療養費制度については、<生命保険と健康状態の関係「虫垂炎」>で外来通院と比較した症例を挙げているので、こちらを参考にしてくださいね。
日本の会社員で有給休暇を毎年使い切っている人は、限りなく少ないと思います。
もともと病気がちだったり、子どもの病気休暇の多い女性は毎年有給が足りないと嘆いているものですが、自分の都合だけできっちり有給を使い切っている正規職員はどれだけいることでしょうか。
もしめまいで働けなくなったとしたら、ここぞとばかりに有給を消化します。
体調不良で使わずにいつ使うのかと、開き直ってしまいましょう(^_-)-
これで、1週間分の残業手当はつかないにしても、減給とはなりませんね。
ただし、脱サラして独立したフリーランスや農家の方達には、有給休暇はありませんけれど・・・。
次に、生命保険の医療保険に加入していたら、入院給付金を請求します。
といっても、
- 自分の加入している保険が入院1日目から対応しているのかどうか
- 入院日額いくらか
- 診断書を作成しても、入院給付金額の方が高くなるか
という3点を確認しなければなりません。
最近は入院1日目から入院給付金の出る商品が多いですけれど、入院5日目からなどと条件の付いているものもあります。
また、生命保険用の診断書は最低5000円、通常7000円前後の金額が自費でかかりますので、文書料を窓口負担しても3日間の入院給付金がプラスになることを確認しておく必要があります。
実際のところ、私は医療保険に加入していないので、今3日入院しようが10日入院しようが入院給付金は受け取れません。
私と同じように医療保険に加入せず、生命保険は最低限の死亡保険だけという方は、【2】の選択肢は使えませんね。
最期に、【3】の傷病手当金です。
傷病手当金は、ケガや病気で働けなくなったときに受け取れるお金ですが、有給休暇のように100%の保障にはなりません。
傷病手当金の支給には、
- 3日間の待機期間が必要
- 受け取れる金額は、給与日額の2/3程度
- 自営業者等の国民健康保険の加入者には、適応されない
こういった条件もありますが、今回の例では最低でも木曜日と金曜日の休暇分については傷病手当金を受け取ることができます。
もしかしたら、週明けも調子が悪くて休むかもしれないので、そうなるともう少しもらえるかもしれません。
ただし、連続した休みでないと対象にならないので、半日出勤したけれどまた調子を崩して休んだ・・・という場合には、また3日間の待機期間が発生します。
とりあえず、数日間の休業でも何かしらのセーフティネットにひっかかれば安心ですね。
体調不良のとき、生命保険よりも大切なことは?
たかがめまいとあなどるなかれ。
本当に命を落としかねない病気もあるし、仮に良性のものであってもその期間は本人にとってはとても辛いのです。
仕事を休んだ時の生命保険や使える制度について知っていることも大切ですが、ここで考えてもらいたいことがあります。
ちょっとした体調不良を起こしたとき、あなたは安心して休むことのできる環境にいるでしょうか?
もしちょっと調子が悪いという程度でも気軽に休みがとれたら、何日も寝込むような状況になる前に回復できるかもしれません。
体質にもよりますが、ONとOFFのバランスがきっちりとれていたら、めまいを起こすような状態にはなりにくいのです。
それに有給休暇の取得しやすい職場なら、もし本当に大きな病気にかかってしまったとしても、職場の理解を得て仕事を続けることができるでしょう。
これだけでも、もしもに対する保障額が変わるかもしれませんね。
また、もとから数か月分の生活費の貯蓄のある人なら、1週間仕事を休んだところで大きな痛手にはならないでしょう。
むしろ、休んだ数日分の給与が減ることもよりも、休みがとれたことに安堵しているかもしれませんね。
セーフティネットの活用も必要ですが、やはり手元の現金ほど確実なものはないでしょう。
誰しも、いつどんな病気にかかるかわかりません。
自分では体調管理に万全を尽くしていたつもりでも、体調不良を起こすことはあります。
収入面の保障だけでなく、遠慮なく休むことのできる職場作りや信頼関係の構築も、日頃から努めたいところですね。