毎年行う検査も、場合によっては入院となる
生命保険に入ってはいるけれど、実際に保険金や各種給付金を受け取ったことのある人は、どのくらいいるでしょうか?
仮に受け取ったとしても何年に1度かのことで、何度も何度も受け取れるものではありませんよね。
毎年病気にかかって、その病気に対して本当に保険会社が払い続けてくれることも、珍しことですから。
今回は、私が看護師として勤める中で体験した、「毎年給付金を受け取っていた症例」をご紹介しましょう。
60代の女性Tさんは、健康診断で便潜血が陽性になったことをきっかけに大腸内視鏡カメラを受けることになりました。
そして検査中にポリープを発見され、そのまま内視鏡下で切除、念のため1泊入院をしました。
Tさんはポリープができやすい体質のようで、翌年にポリープを切除したフォローのための大腸内視鏡カメラを受けたら、またしてもポリープがあり切除・入院。
それを5年ほど繰り返しました。
ただ、ポリープを切除するたびに入院しなくてはならない上、当日朝から病院にいなくてはならないので、自宅で介護をしているTさんにとってそれは大変とのこと。
そこで、私の勤務する病院での検査を希望されました。
大腸のカメラは胃カメラと違い、食事を摂らなければ大腸が空っぽになることはありません。
大腸が便の通り道であるが故に、必ず前処置といって、便をきれいに出しきって洗い流すという処置が必要になります。
処置といっても下剤を飲むだけなので、病院でなくてはダメ、ということはありません。
しかし、その下剤を飲むという作業を自宅か病院どちらでするかによって、来院時間は異なります。
また、ポリープを切除したあとで入院するかどうか、安静時間についても各医療機関によって対応が異なります。
Tさんが最初に通っていたA病院では、このようにしていました。
- 検査当日、9時に来院
- 病院で来院後下剤を飲む
- 午前中いっぱいかけて、トイレに通って便を出しきる
- 午後検査を受ける(検査の開始が夕方)
- ポリープを切除したら必ず入院、切除しなければ安静時間を経て帰宅
- 入院した場合、翌日退院
この場合自宅で行うことが全くないので、病院に全てお任せ!という人にはよいでしょう。
しかし、Tさんのように介護をしている・仕事をしているという人の場合、入院になるかどうかは検査のあと初めてわかるとか、検査当日朝から病院につめているのに検査の開始は夕方・・・では困る人もいるのです。
各医療機関の事情もあるので、A病院のやり方がダメとは言いません。
しかし、Tさんには合わなかったということですね。
私の勤務先では、前処置には2種類あって、楽な方法は当日の朝自宅で下剤を飲んで、午後13時来院、15時には終わるという具合。(前日から検査食や下剤を飲むパターンもあります。)
ポリープを切除したら入院とはルーティン化しておらず、出血がひどかった場合等に限っての入院としていたので、Tさんにとって検査を受けやすい方法だったのです。
実際ポリープもあって切除したものの、すぐに帰宅できたので「楽にできてよかったわ」と喜んでいたTさん。
もちろん、入院しない分、病院への支払も安く済みました。
ところが、後日保険請求をめぐってちょっとした問題が起こりました。
大腸内視鏡のたびに受け取れる“お宝保険”
Tさんが以前通っていたA病院では、ポリープ切除が手術の扱いになり、しかも一泊入院でしたから、Tさんは手術給付金と日額?円(金額は不明)をもらうことができました。
そのため、検査を受けて帰る際に保険会社に提出するための診断書を申し込んでいました。
実際に5年間は、保険金を受け取ることができました。
生命保険用の診断書は、1通7000円から10000円ほどかかります。
わざわざ書類を申し込んで手続きをとるという手間と書類代を差し引いても、保険請求する方がとくだったということですね。
入院日額5000円として2日分で10000円、それを書類代と考えると、手術の給付金がまるまるプラスになる計算だったのでしょう。
(私達看護師は生命保険や高額医療費について質問されることもありますが、実際の金額について聞くことはありませんので、正確な金額はわかりません。)
ところが私の勤務する病院にうつって来たら、保険が通らなかったのです。
というより、医師から「診断書は書けない」と言われてしまったのです。
同じ大腸内視鏡カメラにポリープ切除です。
どうしてA病院で受けられたものが、受けられないのか?
これには理由がありました。
まず1つ、入院をしていないので入院に関する給付金は受けられませんね。
それと、ポリープ切除に関しては、過去5年間いくつものポリープをA病院で切除してきたため、当院で検査を行った6年目は、もう残りが1つだけしかなかったのです。
それも極小さなポリープだったので、簡単に取り切ることができました。
どの機材を使うか・どのような処置をしたかによって、診療報酬の「コード」というものが違います。
6回目にあたる今回は簡単に取り切ることのできたため、診断書を書こうにも、そのコードが手術という扱いにならないコードだから、書くに書けない、ということだったのです。
ひょっとしたら、A病院では同じように小さなポリープを切除しただけでも、手術用器具を使い、手術をしたというコードを診断書に書いていたのかもしれませんが・・・それはわかりません。
実際の給付額がどのくらいだったのかはわかりませんが、6年目は同じ大腸内視鏡カメラでも、手術給付金は受け取れませんでした。
しかし、Tさんは介護の問題もあったため、とにかく病院で拘束される時間が短く、楽にできたからそれでいいと言ってくれました。
ポリープができやすいため毎年受けるのに、その都度朝から病院で待機して入院・・・となるよりは、病院での滞在時間が安静時間込みでも3時間で済んだことに、価値を見出してくれたのです。
しかしこの内視鏡をめぐっての保険の問題は、実はよくあります。
受けた医療機関の違いだけでなく、保険会社によっても、○○社はよく通るけれど、□□社ははねられる・・・ということをよく聞きます。
Tさんの場合は、「診断書は書けないと医師が言っています」と事務での対応で終わったため、診断書料はかかりませんでした。
しかし、場合によっては7000円以上も診断書料を払って書いてもらったのに、保険会社から保険金給付はできないと言われてしまうケースもあります。
そうなると、診断書料の分だけ無駄になってしまうのです。
大腸内視鏡カメラの方法自体は、各医療機関によって違います。
医師の方針、内視鏡室の人員、安全管理の考え方によって、同じ検査であってもやり方が異なるのです。
繰り返しますが、決して間違いではないのです。
Tさんの場合、A病院で行っていた5年間は、検査のたびに支払われました。
最初から毎年の定期フォローかかる分給付金を受け取ろう、と思って入ったわけではありませんが、もらえるものはもらいたいですよね。
Tさんのように、場合によっては毎年検査代がチャラになり、元気なのに手術給付金がプラスαの収入になってしまう保険があることを、私は初めて知りました。
せっかく毎月高額な保険料を払っているのなら、しっかり受け取れるものの方がよいですよね。
ちなみに、Tさんは7年目の検査のときにはポリープは全くなく、切除することもなくなりました。
さすがにA病院に通い続けていたとしても、切除していないものを手術扱いにすることはできないでしょうから、病院を変えたことで給付金を受けられなかったのは、6年目だけということになるでしょうか。
同じ検査、同じ処置・・・それなのに、保険会社によっても受け取れないこともあります。
一般に、バブルの時代の年率6%・7%の高利率の生命保険を「お宝保険」と言いますが、ある意味Tさんの入っている生命保険も「お宝保険」だったということでしょうか。
最初の5年間だけでも入院給付金と手術給付金をを受け取れたのですから。
保険って、本当にいろいろあるものですねぇ。