生命保険と傷害保険の違いは何?
以前このコーナーで、保険代理店の社長が自分は生命保険に加入していなかった事例をご紹介しました。
保険代理店の社長が趣味のロードバイクのレース中に落車事故を起こし、鎖骨骨折で入院・手術。
この入院を機に発覚したのが、生命保険の代理店を経営しているのに自分は生命保険に何一つ加入していなかったという事実でした。
保険代理店は生命保険だけではなく、傷害保険や火災保険・地震保険も取り扱っています。
ですから、一生に関わる「もしも」に対する備えを全面的にできるよう、自社で商品がそろっているわけです。
それなのに社長ですら加入していなかったということは、生命保険は割に合わないという意味でしょうか?
せめて傷害保険にだけでも加入していたら、入院費用くらい出たはずなのに・・・。
生命保険と聞くと死亡保険や医療保険を思い浮かべると思いますが、傷害保険は何が違うのでしょうか。
どれも人の一生に関わる保険ですが、保障の対象が違います。
生命保険は死亡保険を基本とし、そこに医療保険や介護保険・子ども保険などの商品が派生しました。
死亡保険は、死亡した理由を問わず非契約者が死亡するか高度障害になった場合に保険金が支払われます。
ですから、地震による災害も自動車事故も今回のような趣味のロードバイクの事故でも、最悪の事態に陥った場合には死亡保険金を受け取ることができます。
生命保険の中でもメジャーな医療保険は、病気やケガによる入院や手術を保障するものです。
こちらに加入していれば、ロードバイクによるケガでも手術給付金や入院給付金が受け取れます。
そして傷害保険はというと、ケガによる治療が保障対象となっています。
病気のための入院や手術は、給付金の支払い対象ではありません。
保障内容が限定されるため、生命保険に比べて保険料が安くなるのです。
傷害保険は、費用対効果バツグン!?
実は私も、30代後半になってロードバイクを始めました。
レースに出ることはありませんが、基本的には車道を走るので自動車事故に巻き込まれないかという心配を日々抱えています。
自転車は車とぶつかった際に身を守るものがヘルメットだけなので、大けがにつながります。
それでいて、歩行者とぶつかってしまえば自分が加害者となることもあるのです。
私も歩行者と接触しそうになったことがあり、ヒヤッとした経験があります。
特に高齢者は動きもゆっくりですし暗い色の服を好むので、夜は目に留まりにくいのです。
ふらっと歩道から車道に出て来ることもあるので、注意していても避けきれないことがあります。
そこで私は、事故を起こしてしまう前に傷害保険に加入しました。
高額な保険料の発生する医療保険と違い、年2万円ちょっとで加入することができました(その代り、1年単位の掛け捨てです)。
加入したときは、自分が加害者側にたったときに被害者に対する補償・賠償のための保険のつもりでした。
後日、その保障範囲の広さとありがたみを感じることになりました・・・。
ある日、地元の河川敷を気持ちよく走っていたとき、よそ見をして植木に突っ込んだあげく落車するという事故を起こしてしまったのです (*´Д`)
のんびり走っていたとはいえ、時速20㎞は出ていました。
ものすごい衝撃で事故に気付きましたが、既にハンドルは植木に突き刺さった状態でした。
普段はクリートと呼ばれる金具でペダルと固定していた足はかろうじて外すことができましたが、そのまま落車。
全身をコンクリートに打ち付けてしまいました。
グローブはボロボロに破れて2本の指から出血し、植木の枝でざっくりと皮膚と脂肪が削げています。
指は曲がるので骨折はないだろうな・・・と思いましたが、スパッと切れたキズよりも治癒には時間がかかりそうな予感がしました。
痛む指でそのまま帰宅しましたが帰宅後にどんどん指は腫れてしまい、握ることができなくなってしまいました。
おまけに、時間がたってからぶつけたところが痛み出しました。
そこら中に内出血があるし、なぜか落車と反対側の肩まで痛んで上がりません。
翌日整形外科を受診し、痛む指・肩・骨盤それぞれを複数の方向からレントゲン撮影し、エコーでも筋肉の状態を確認してもらいました。
ありがたいことに骨折はなく、指も含めて全て打撲で済みました。
これらの検査に加えて初診料に薬代等を含めて、初回だけで5000円弱かかりました。
ケガの治療も大事ですが、仕事も困ります。
看護師という仕事柄、肩に力が入らない上に指2本が曲がらないとなると、できる仕事が限られます。
私は残っていた有給を使って、少しばかり長めに休みをもらうことにしました。
そして馴染みの保険屋さんに連絡し、傷害保険はいくら超えたら使った方が得か確認しました。
保険金請求に使う診断書は1通5000円以上しますし、車の任意保険のように下手に保険を使うと次の更新で高くなってしまうかもしれないと思ったからです。
私の加入している傷害保険では、3か月以上の通院もしくは手術がない場合の保険請求では診断書が不要で、次の更新にも影響はないとのこと。
保障内容は、整形外科でかかった実費(診察代・検査代・薬代)に加え、1回につき1500円の通院費用まで出るとのこと。
入っててよかった~((´∀`))
まさか自分のケガで使うとは思っていませんでしたけれど…。
事故による“もしも”で、生活はどう変わるのか?
ここからは、同じロードバイクという事故を通して保険代理店社長と私の例、それから神戸で起こった小学生の自転車事故から、事故が家計にどのような影響を及ぼすか考えていきたいと思います。
上で紹介した生命保険・傷害保険なしの保険代理店社長は、下の経済的負担を抱えました。
- 自転車の修理費用
- 手術、入院費用
- 退院後の外来通院費用
- 休んだ間に稼いだハズの利益
一方私の方は外来通院のみで済みましたから、経済的負担は下の2つ。
- 外来通院費用⇒傷害保険による給付金で実質負担はゼロ
- 休んだ分の日給⇒有給休暇の消化で、翌月給与に支障なし
というわけで、実質私のお財布からお金は出ていきませんでした。
しいていえば、休みをもらった分職場のみんなにお菓子を買っていきましたが・・・それすらも1日1500円の通院費用でチャラです。
私の場合はいくつものラッキーが重なりました。
- 骨折のない軽症で指の外傷と全身打撲のみ、グローブが破れただけ
- ロードバイクはほぼ無傷で、修理費ゼロ
- 有給が残っていたため有給消化にあて、翌月の収入に影響なし
同じロードバイクの事故ですが、保険代理店社長の方は手術もしたので、総額で何十万(バイクが高額なら、100万円を超えるかも?)もの自己負担になったことでしょう。
しかし、自転車をめぐる事故はもっと悪い方に働くことがあります。
この社長ですら、ラッキーと言えるのかもしれません。
もし、子どもや高齢者にぶつかって、寝たきりになるような障害を負わせてしまったら?
止まっていた高級車にぶつかってしまったら?
自分が事故によるケガで、一生寝たきりになってしまったら・・・!?
事故で怖いのは、脊髄損傷です。
見た目に大きなキズが残らなくても、脊髄を損傷した場合にはその位置によって下半身麻痺や全身麻痺となりますし、頚髄損傷の場合は呼吸中枢の障害によって死亡することもあるのです。
医療保険に加入していたら、最低限の自分に対する治療費の一部が負担されるでしょう。
しかし、相手への保障は医療保険では対象外です。
死亡保険は自分が死亡した場合には対象となりますが、相手のケガや物損に対する保障はありません。
私は危険性の高いロードバイクに乗っていますが、事故を起こすのはロードバイクだけとは限りません。
子どもの乗るような自転車でさえ、大きな事故を起こすこともあります。
2008年9月に神戸市の小学生が散歩途中の女性に衝突し、女性は頭を強打して意識が戻らず、寝たきりの生活になってしまうという事故が起こりました。
これに対し、神戸地裁は自転車を運転していた少年の母親(40)に約9500万円という高額賠償を命じました。
(日本経済新聞:親に9500万円賠償命令 小5自転車が女性はねる)
子どもの起こす事故ですら、人命にかかわることがあるのです。
神戸の少年のケースでは、被害者・被害者家族の人生を大きく変えてしまう結果となりました。
それだけではありません。
被害者への高額賠償で、少年一家の将来にも大きな影響を及ぼしたことは間違いありません。
生命保険に加入していたからといって被害者の障害は消えませんが、もし傷害保険に加入していたら、賠償問題については少年一家の負担は大きく変わっていたことでしょう。
病気以外のもしもに、どう備えるべきか
私達が「もしも」を考えるときは、大黒柱の病気と死亡を考えます。
しかし、それだけではないということです。
今回の私の事故はラッキーにも大きなケガもなく、相手もいませんでした。
派手に突っ込んだ上の落車なのに、ロードバイクもほぼ無傷なんて奇跡です。
ヘルメットとグローブの着用をしていたからのことですが、このあともラッキーが続くかはわかりません。
私は数年前に、医療保険を解約しました。
持病があって保険料が高額であることと、医療保険による保障範囲を検討した結果です。
でも、今回は傷害保険で病院にかかる費用を、全て保障してもらうことができました。
むしろ今回のケガは外来通院だけなので、医療保険を解約していなかったとしても給付金は1円もおりませんでした。
そう考えると、年間10万円以上払い込んでいた医療保険よりも、どうせ不払いになってしまう可能性が高いのなら、傷害保険でケガに対する備えだけしておくのもアリなのかもしれません。
保険で元をとろうと思ってはいけませんけれど、結果的に通院費用分がプラスとなりましたから、費用対効果としては悪くないのではないでしょうか。
もちろん、これが正しい選択というわけではありません。
あくまでも、考え方の1つです。
生命保険を検討する際には、もしもの事態が家計に及ぼす影響を考えて加入すると思います。
人生におけるもしもの事態が病気だけではないとしたら、「備え=生命保険」だけではなく、傷害保険や預貯金・公的保障なども含めた合わせ技で、穴のない備えを考えたいところですね。