「自律神経失調症」は生命保険や医療保険で対応すべきではない

自律神経失調症と生命保険

真面目な日本人は、心の叫びに気づかない!?

日本人は総じて、真面目な性格の人が多いですね。
そして、日本では一度正規雇用で仕事を始めると、残業や休日出勤が当たり前に課せられることも日常化しています。
また、非正規社員であっても正規社員と同様の仕事内容・時間外労働を押し付けられることも、問題となっています。

そのため、日本人は長期休暇をとらない(とれない)し、ワーキングマザーの有給は子供の体調不良と学校行事の参加で消化してしまい、本当の休暇にはなりません。

だからこそ、日本には祝日が多いのです。
2017年は国民の祝日が土曜日と重なる日が多く、嘆いているサラリーマンが大勢いると思います。
それでも年間を通すと17日あり、世界的には多いのです。

個人で有給を積極的に消化したり、ロングバケーションをとることが難しいため、国をあげての休日にして、休みを多くとれるようにしているようですね。

一方で、電通社員の自殺でも過重労働問題が叫ばれていますが、労働時間だけが職場における問題ではありません。
「(サービス残業を)嫌とは言わせない」「結果を出せ」「空気を読め」といった、精神的なプレッシャーもストレスとなります。

仕事上の成果だけではなく、パワハラ上司によるいじめも、ストレスの原因として確実に存在します。
上手にストレスを発散できる人や、適度に聞き流すことのできる人はよいのですが、真面目な人ほど頑張ってしまいます。

120%の力を常に出すことで、力を付けていく人もいます。
しかし、常に120%を出し続けることや、一時的であっても200%の力を出そうとすると、心がポキンと折れてしまう人もいるのです。

そのとき、心の問題であっても体に不調が出る人も多くいます。
本来真面目な人が心の叫びに気づかずに無理をすることで、身体の方から訴えるようになるのです。
この状態が、今回のテーマである「自律神経失調症」なのです。



がんばり過ぎているあなたは、自律神経失調症かも?

自律神経失調症はよく聞く言葉ではありますが、実際はどのような病気なのでしょうか?
一般社団法人 日本臨床内科医会より、自律神経失調症のパンフレットが発行されていますので、こちらが大変わかりやすいと思います。

自律神経失調症とは、『自律神経のバランスが崩れている状態』です。
ストレスによって引き起こされる変調で、ストレスの原因は仕事であったり家庭であったり、または友人関係のこともあります。
最近では、IT機器の長時間使用が自律神経失調症に関連しているとも言われています。

人間の体は、無意識のうちに、交感神経と副交感神経で身体を“戦闘態勢モード”か“リラックスモード”を切り替えています。
交感神経⇒戦闘態勢モード
副交感神経⇒リラックスモード

このバランスを上手にとることで、暑いときには汗をかき、夜はぐっすり眠ることができるのです。
ところが、ストレスを抱えた状態を放置していると、この自律神経のバランスが崩れてしまいます。

本当はリラックスして眠らなくてはいけないときに戦闘モードが続いてしまい、眠れなくなる人がいます。
胸の圧迫感や動悸を自覚して、心臓の問題ではないかと循環器科を受診する人もいます。

自律神経失調症の多くは、本来リラックスして休むべきときに休まらないことで、身体になんらかの症状が出ることです。
頑張りすぎ・真面目な人は、自分のキャパを超えることを求められたとき、それに応じようとします。
そして、キャパオーバーであることに自分では気づかず、身体の方が声を発するのです。

あなたはどうでしょうか?
自律神経失調症の症状がないか、チェックしてみましょう

< あなたのストレス度をチェックしてみよう >

 自律神経失調症のパンフレットより抜粋
からだのチェック
□よく頭痛がする、頭が重い       □胸が圧迫されるようで苦しい
□よく肩がこる             □めまいがする
□腰が痛い               □全身がだるい感じがする
□手足が震える             □下痢や便秘になりやすい
□のどがつまる感じがする        □手足がしびれる

心のチェック
□これから先の自信がない        □朝、気分がすっきりしない
□朝、早く目が覚める          □根気が続かない
□なんとなく不安でイライラする     □仕事にとりかかる気分にならない
□物事がなかなか決断できない      □人に気軽に会えない
□集中力がなくなる           □ふと死にたくなる

☑が10個以上の人:要治療。かかりつけ医に相談し、適切な治療を受けてください。
☑が5〜9個の人 :要注意。ストレス対策をし、規則的な生活を心掛けましょう。
☑が5個未満の人 :気掛かりなことがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。

あなたは、いくつ当てはまりましたか?
誰しもこれから先のことを考えると、不安になることはあります。
私もバツイチで病気を抱え、子供を大学までいかせてあげられるだろうか・・・と、不安で押しつぶされそうになることはあります。

不安のおかげでリスクと向き合うことになり、教育資金の積み立てを始め、生命保険の加入を検討し、体調管理に気をつけるなど、前向きな行動につながるのなら問題ありません。
ただし、度が過ぎると自律神経失調症になってしまうのです。

自律神経失調症の患者は、意外に少ない?

自律神経失調症の患者さん達は、心の変調よりも、身体の変調を訴えてくることが多い傾向にあります。
例えば頭が痛いのは脳の病気、胃が痛いのは消化器の病気、動悸がするのは心臓の病気ではないか・・・と心配するわけです。

そうなると、本人の訴えを元に頭痛や胃痛を病名とし、医師は薬を処方します。
もともとは心に原因があり、自律神経失調症の症状の1つであったとしても。

自律神経失調症は、採血データのようにはっきりとした異常値というものがありませんから、なかなか一般の内科医では診断をつけることが難しいのが現状です。
そのため、自律神経失調症と診断されている人は、実際よりも格段に少ないのです

一方、身体よりも心の方に変調をきたしていることを本人が自覚している場合には、心療内科を受診する人もいます。
心療内科は精神科との線引きが難しいのですが、心の問題が身体に現れる心身症に対し、身体的治療をメインで行うのが心療内科、心の問題に対して治療を行うのが精神科と分類されています。

実際は心療内科でも身体だけではなくて、カウンセリングも行います。
必要があれば、安定剤や睡眠薬・睡眠導入剤を処方します。
そして、状態が進行してうつ病になってしまった場合には、入院による治療が必要となることもあります。

一般的に、自律神経失調症はメンタルが弱いせいと取られがちであり、また心療内科や精神科の受診をためらう人も多く、正式な診断がつかないまま一般内科で治療を受けている場合も多いのです。

病名と処方内容が、生命保険の引き受け基準にひっかかる!

さて、睡眠薬と安定剤が出てきたところで、<「不眠症(睡眠導入剤、睡眠薬)」と生命保険の関係 >の記事を振り返ってみたいと思います。
家族の睡眠薬を自分に処方してもらっていた私の同僚が、生命保険に新規加入をしようとしたものの引き受け拒否された話です。

彼女も、当初は仕事が忙しいことから自律神経失調症だったのだと思われます。
状態が落ち着いたところで睡眠薬の処方を止めておけばよかったものを、家族のために自分のカルテで継続処方していました。(もちろんこれはいけません)

生命保険会社は、睡眠薬や安定剤の処方に対して、非常に厳しい基準を設けています。
これらの類の薬は、処方を受けただけで精神疾患という枠にはめてしまいます。
最終処方日より2年経過していれば一応治癒したことにはなったのでしょうけれど、彼女は家族用の処方を受け続けていたため、継続治療しているととられてしまいました。

心の病気というのは、採血や画像診断のように他人が客観的に状態を把握することができません。
実際、心療内科や精神科では、医師との間でも駆け引きがあるので、本人の訴えたことをありのままに受けとることができないのです。

そのため、精神疾患は治ったかどうかの区別もつきにくいですし、本当に病気なのかもわからない、それを判断するのは医師の経験が便り・・・となるのです。

本当は自立神経失調症で、安定剤の方が効果ありの状態でも、そのとき診察した医師がただ「頭痛」として、痛み止めを処方した場合、精神疾患ととられることはありません。
生命保険の新規加入に際して、問題になることはないでしょう。

しかし、自分の体調不良の原因がメンタルにあると自覚し、心療内科を受診して専門医の診察を受けた場合はどうなるでしょう。
自律神経失調症と診断されて適切な処方をされた場合、生命保険会社側は精神疾患患者であると判断し、新規加入は引き受け拒否とするでしょう。

同じ人・同じ状態でも、病名と処方が違えば、生命保険会社の判断も変わってしまうのです。
おかしな話ですね。

大切なことってなんだろう?心の訴えに耳を傾けよう

精神疾患と判断された場合には、糖尿病や脳梗塞の既往がある人ですら加入が認められる「引き受け基準緩和型保険」でも、引き受け拒否となることがほとんど。
カタカナ系の生命保険会社ですと、日本の会社よりも多少基準が甘いとも言われていますが、あまり期待はできないようです。

しかし、ここで大切なことは何か考えてください。
あなたがもし、上のチェックリストで該当する項目が多かった場合、なんらかの原因に対し、心が悲鳴をあげているということです。

大切なことは、その原因から回避して心を休め、適切な治療を受けることです。
生命保険に加入することが大切なのではありません。

自律神経失調症は、「メンタルが弱い」という程度に、軽くみられがちです。
そのため、体調不良を表に出せないこともしばしばあります。

大切なことは、あなたと家族が幸せに生きること。
生命保険は、そのリスク部分に対する手助けでしかありません。

自律神経失調症であることを隠すことは、ある意味可能です。
他人が証明するデータはないのですから。

一般内科で痛み止めや胃薬・整腸剤でごまかしている人はたくさんいます。
しかし、生命保険加入を優先するあまりに専門である心療内科を避け、本来必要な治療を受けないなんて、本末転倒。

大切なことは、なにでしょうか?
あなたの心が悲鳴をあげているのなら、まず、あなたが心の声に耳を傾けてあげましょう。
大丈夫、リスクに対応できるのは、生命保険だけではありませんから。(*^-^*)