不思議がいっぱいの蕁麻疹
突然痒みが出てきたと思ったらあっという間にブツブツが融合して膨れ上がり、全身に赤い地図が浮かび上がる・・・それが蕁麻疹です。
想像しただけで、痒くなってきそうですね(*_*;
あなたも、1度は経験したことがあるのではないでしょうか。
軽い症状であれば、痒みに耐えているといつの間にか消失します。
お風呂の後で出た蕁麻疹が、ある程度時間が経過したら自然に治まった・・・という経験もあるでしょう。
しかし蕁麻疹は、同じ病名とは思えないほど症状の出方と重症度が違います。
蕁麻疹というと一過性のイメージがあるかと思いますが、実は1か月以上続くこともあります。
このように長期化した蕁麻疹を、慢性蕁麻疹と言います。
また、食べ物や植物などはっきりと原因の判明しているものもあれば、血液検査を受けても原因となるアレルゲンが特定できない場合もあります。
原因がわからなければアレルゲンを回避することもできないので、長期化したり何度も繰り返すことになります。
蕁麻疹と一口に言っても、症状も対応も様々ということですね。
蕁麻疹のメカニズムについては、公益社団法人日本皮膚科学会 皮膚科Q&A蕁麻疹を参考にしていただけるとわかりやすいと思います。
このQ&Aによると、蕁麻疹の種類は7つに分けられるそうです。
<蕁麻疹の種類>
【1】急性蕁麻疹
毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して1ヶ月以内のもの。
細菌、ウイルス感染などが原因となっていることが多い。
【2】慢性蕁麻疹
毎日のように繰り返し症状が現れる蕁麻疹のうち、発症して1ヶ月以上経過したもの。原因が特定できないことが多い。
【3】物理性蕁麻疹
機械的擦過や圧迫、寒冷、温熱、日光、振動などといった物理的刺激により起こる。
【4】コリン性蕁麻疹
入浴や運動などで汗をかくと現れる蕁麻疹。
一つ一つの膨疹(皮膚の膨らみ)の大きさが1~4mm程度と小さい。
小児から若い成人に多い。
【5】アレルギー性蕁麻疹
食べ物や薬剤、昆虫などに含まれる特定物質(アレルゲン)に反応して起こるもの。
アレルゲンに結合するIgEという血清蛋白が関与する。
【6】イントレランス
アスピリンなどの非ステロイド系消炎鎮痛薬、色素、造影剤、食品中のサリチル酸などにより起こる蕁麻疹で、IgEが関与しない。
【7】血管性浮腫
唇やまぶたなどが突然腫れあがり、2~3日かかって消える。
痒みを伴わない。
稀に遺伝性のものである場合がある。
蕁麻疹といってもこんなに発生の機序に種類があるとは、驚きですね。
蕁麻疹で命を落とすことがある!?
蕁麻疹はその多くが皮膚症状のみで、命に関わるものではありません。
しかし、中にはたかが蕁麻疹だろうと思っていたら症状が全身に及び、命を落としてしまうケースもあります。
上の<蕁麻疹の種類>の中で怖いのは、【5】アレルギー性蕁麻疹・【6】イントレランス・【7】血管性浮腫です。
イントレランスとは聞いたことがないかと思いますが、これは「不耐症」といい、アレルギーとは別のものですが、いずれにせよ身体が耐えられないということです。
この原因ともなるのが、よく使われる解熱鎮痛薬であるロキソニン。
ロキソニンの弊害については生命保険と健康状態の関係「 胃潰瘍 胃炎 胃カメラ」でもお伝えしていますが、安易に処方されたりドラッグストアで購入可能な割に、実は怖い薬でもあるのですね。
痛みや熱に効くということは、それだけ身体に対する影響もあるのです。
実はこのロキソニンを始めとする非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による蕁麻疹については、厚労省でも重症副作用疾患別対応マニュアル 非ステロイド性抗炎症薬による蕁麻疹/血管性浮腫というものを作成しており、医療従事者への注意喚起も行っています。
遺伝性血管性浮腫も聞き慣れない病気ですが、何らかの原因によって突然、顔・気道・手足・消化管が腫れてしまう病気で、遺伝子異常によって発症します。
唇は腫れあがり目も開かなくなって誰かわからないくらいになりますし、消化管の腫れは激しい嘔吐と腹痛を引き起します。
気道が浮腫によって閉塞されてしまうと呼吸ができなくなってしまうので、命に関わる病気です。
遺伝性血管性浮腫は最近になってようやく知られてきた病気ですが、根本的に治す薬は未だなく、原発性免疫不全症候群の1つとして難病指定されています。
これも蕁麻疹症状を呈することがあります。
また、身近な食べ物で起こるアレルギーでは、蕁麻疹を初期症状としてそのまま呼吸状態が悪化してしまう、アナフィラキシーショックに移行する場合があります。
このアナフィラキシーショックの怖さは、身をもって経験した人しかわからないかもしれません。
なぜなら、初期症状はあくまでも蕁麻疹やちょっとのどがイガイガする・・・という程度なので、よくある原因不明の蕁麻疹などと見分けがつかないからです。
私自身、ものの数分で状態が悪化した症例(生命保険と健康状態の関係「アレルギー」)を経験して、アナフィラキシーショックの怖さを知りました。
それ以降、蕁麻疹で病院を受診した患者さんで、特に「今日」とか「さっき」から症状が出たという場合には、呼吸状態とアレルギーの有無を必ず確認するようになりました。
蕁麻疹って、病院を受診するほどのこともないものが圧倒的に多いですよね。
だからこそ、この怖さを知っている人が少ないのです。
蕁麻疹もピンからキリまで・・・生命保険の加入に支障アリ?
ここまで、蕁麻疹も数時間で治まるものから命に関わるものまである、ということをお伝えしてきました。
ただ痒いだけでは済まないのが、蕁麻疹の怖いところですね。
<蕁麻疹の種類>にもありますが、2慢性蕁麻疹や3物理性蕁麻疹・4コリン性蕁麻疹は、原因が特定できなかったり、いつもと変わらない日常生活の中で発症することもあります。
そして、このように命に別状ないものであっても、長期化してしまえば治療の対象となります。
急性の蕁麻疹は、冷やしたり一時的に抗ヒスタミン薬を使用すると、2~3日で治まることが多いです。
2~3日というと、風邪よりも短いくらいの期間です。
ですから、この程度の蕁麻疹が一度あったくらいでは、「生命保険に加入する際に逐一風邪を報告するか」と同じレベルになりますので、そう問題になることはありません。
しかし、症状が1か月以上続く慢性蕁麻疹の場合では、抗ヒスタミン薬を1か月以上内服したり外用薬を使用します。
通院も何回にも及ぶので、これは風邪と同じ扱いにはできませんね。
慢性化している蕁麻疹が、入院治療や手術に至るような大きな病気と関連するかどうかというと、可能性は低いと思います。
しかし、非ステロイド性抗炎症薬による蕁麻疹/血管性浮腫の可能性もゼロではありません。
また、蕁麻疹は既になんらかの病気にかかっていて、免疫力・体力の低下していることの表れかもしれません。
ですから、たかが蕁麻疹と思ったとしても生命保険にこれから加入を検討しているのであれば、告知する必要がありますね。
痒みが治まってしまうと、本人すら忘れてしまうかもしれません。
しかし、風邪・花粉症レベルのものでない限り、原因が何かわからなかったとしても通院していたことは告知しておかなくてはなりません。
仮に告知して加入したところで、本当に何かしらの大病をしたときに、保険金が不払いになる可能性もあります。
よくある生命保険のムダ03「保険金不払い条項が多すぎる」でもお伝えしている通り、私達には理解できない保険会社のルールによって保険金や各種給付金の支払いは変わるのです。
しかし、もし生命保険に新規で加入するのであれば、少なくとも過去3年間の受診歴は告知しておく方が安心です。
加入した後で忘れていたことに気づいた場合も、あとから追加で告知すべきでしょう。
蕁麻疹は一次的なものなのか、それともこの先どんな病気に発展するか、また既に体に潜んでいる病気の前駆症状なのか、現代医学でもわかりません。
「たかが」「この程度」、と思ってはいけませんね。