医療保険の前に・・・医療を支えてくれる制度をおさらいしよう
生命保険というと、一般的には死亡保険のイメージがあるかと思いますが、次に浮かぶとしたら、医療保険になるのではないでしょうか?
どんな病気に、いつかかるのか・・・それは誰にもわかりません。
同じ脳梗塞だって、後遺症なく元の生活を送れるようになる人もいれば、一生寝たきりとなる人だっています。
健康管理には気をつけている!!という人だって、全ての病気を努力によって防ぐことはできないのです。
例えば、脳動脈瘤の破裂によるクモ膜下出血を例に挙げてみましょう。
脳動脈瘤の破裂する引き金となるのが、高血圧です。
血圧の管理は日々の努力で可能かもしれませんね。
しかし、脳動脈瘤そのものは構造的に血管のもろい部分にできてしまうものなので、いくら血圧管理をしたからと言って、絶対にできないとは言いきれないのです。
また、膠原病(こうげんびょう)に至ってはまだ解明されていない部分も多く、難病指定されているものは根本治療のない病気ということです。
これらはⅡ型糖尿病とは違って、自己管理とは全く別のところに原因があり、自分ではどうしようもありません。
他にも、透析を受けている患者さんの中には、遺伝的疾患による常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)という病気もあります。
一時、透析患者さんに対して「透析患者は自業自得」「全額自己負担せよ」、といった元アナウンサーの発言が問題となりましたね。
これは明らかに、このようなどうにもならない病気の存在を知らない、浅はかな人間の言うことです。
話を生命保険に戻しましょう。
これらのように、いくら自助努力で健康を維持しようと思っても、人間には限界というものがあります。
その時に、お金の備えができていますか?
医療をめぐっては、様々なセーフティネットがあります。
日本は国民皆保険制度のおかげで、全額自己負担して医療を受けるということは、納めるべきものを納めている人ならば、まずありません。
さらに、それでも高額な医療費を請求されてしまい、同じ月の中で一定金額を超えた場合のための高額療養費制度というものがあります。
もし事前に高額治療を受けることが解っていれば、限度額認定証を受けることで、窓口負担を最初から一定額までに抑えることができます。
(一定額・限度額は、年齢と収入によって違います。)
他にも、1年を通じて医療費が高かった場合には、確定申告をすることで還付されて来ますし、私のようなシングルペアレントなら、医療費補助として母子ともに全額無料になることもあります。
そして、仕事もできないくらいの病気を抱えてしまった人ならば、生活保護を受ければ医療費は無料になります。
(無料というのは、母子・生保ともに保険診療分のことを指します。)
更に会社員であれば健康保険からの傷病手当金もありますので、これらが病気治療によって就業不能な間に受けられる現金収入となります。
もし短期間であれば、有給休暇で乗り切ればその月も給与を受け取ることができます。
他にも、障害の具合によっては障害年金も受け取れるかもしれません。
医療を支える制度には、私が知っているだけでこれだけのものがあります。
(福祉や労務の専門家に相談したら、もっといい策があるかもしれません)
日本って、本当に有難いと思います。
そして、これらの制度を受けられる私達がもし、医療に対して生命保険で備えをするとしたら、それは何のためにするものなのか?
これを考えないといけません。
医療保険は難しい!?シンプルに考えてみよう
ここまで医療をめぐるセーフティネットについてお伝えしてきましたが、これらの制度を最大限利用しても困るもの・・・それを補うのが、生命保険です。
数日の休みなら有給で乗り切る、単発での大きな出費には高額療養費で還付金を受ける、そのようなプランでいても困るものには、何があるでしょうか?
おそらくこの3つになるのではないでしょうか?
- 生活費(もともとギリギリの生活の場合、少し減額されるだけで支障が出る)
- 教育費(医療費の負担が長期にわたる場合、将来の教育費が貯められない)
- 住宅ローンや車のローン(毎月必ず、一定額ひかれてしまう)
(介護の問題は複雑になるので、ここでは省きます。)
私の1か月の高額療養費のラインは8万円ちょっとです。
この金額は年収と年齢によって違いますが、健保協会のサイトで簡易試算できます。
数か月に及ぶ治療が必要だとわかり限度額認定証を受けたところで、毎月8万以上のお金を払うような病気になってしまったら、どうでしょう?
年間100万円近いお金が、医療だけでかかってしまいます。
この高額療養費には自費請求分は含まれませんので、入院して個室対応になった場合の差額ベッド代や、病院食の分は8万円とは別に払います。
つまり、現実には月の限度は8万円ではないのです。
そうなると、何が困るでしょう?
- 生活費⇒毎月の給料から8万円も引かれます(1人分の給料しか我が家にはない)
- 教育費⇒毎月の支出が多すぎて、将来の教育費が貯められません。
- 仕事⇒あまりに休みすぎれば、昇給・昇格は見込めません。(降格もありうる)
もし、このように病気に罹ってしまっても、妻なり夫なりの収入があるから大丈夫、という人ならよいでしょう。
毎月限度額を払い続ける能力があり、それでも教育費や生活費に困ることがなければ。
しかし、充分な貯蓄がないまま病気になってしまった場合や、独身者、子どもの人数が多いといった事情のある場合は、生命保険によるリスク管理を検討する価値はありますね。
死亡保険が自分の死んだ後の生活を保障するものであるのに対し、医療保険は基本的には自分自身が受け取り、病気をしている間の生活を支えるものになります。
検討するにあたっては、医療保険にはどんなものがあるのか、その種類について知らなくてはなりませんね。
簡単に分けてみますと、このようになります。
-
期間による種類
- 定期医療保険
- 終身医療保険
-
保障内容による種類
- がん保険
- 特定疾病保障保険
- 先進医療保険
まず、保障期間をいつまでにするかによって加入すべき保険が変わります。
自分の不安な材料が教育費だというのなら、子どもが社会人になる年齢まで入っていれば、原則OKですね。
もし独身で病気に罹ったときの自分の生活が不安という場合は、一生涯の保障が必要になるのかもしれません。
更に、これとは別にどこまで保障してもらうかによっても、選択肢は分かれます。
自分はがん家系だから・・・と心配なのであれば、がん保険という手もあります。
もう少し幅を広くしたいという場合には、がん・心筋梗塞・脳卒中を対象とした特定疾病保障保険というものもいいかもしれません。
また、最近では保険診療が認められていない高度な医療として、先進医療というものがあります。
もし近くで先進医療を導入している大学病院などの大きい医療機関があるのなら、そこまで含めてもいいかもしれません。
しかし、これらはあくまでも“おまけ”です。
いくらがん家系だからといって、本当に自分ががんになるとは限りません。
保険というのは、心配になればなるほど「あれも、これも」と膨れ上がってしまうものなのです。
たくさんの保険商品があって、本当に複雑になってしまっている昨今ですが、実はシンプルに考えてみれば、医療保険はまず期間さえ決めてしまえばいいのです。
あとはどれだけ低い可能性まで、毎月の保険料という形でリスクに備えるか・・・懐具合と価値観、人生観によって決めるわけです。
では、仮に医療保険に入っていた場合、具体的にはどのように保険金が支払われるのでしょうか?
たいていの医療保険は、入院給付金と手術給付金の2つが柱となっています。
入院給付金というのはテレビのCMでもよく耳にする、「入院日額○円」ってやつですね。
5000円とか1万円が多いです。
また、手術給付金というのは手術1回に対して、まとめて受け取れる金額です。
これは10万円単位で設定されているものが多く、私も過去に入っていた保険が医療保険付の養老保険だったので、受け取ることができました。
また、がん保険の場合はがんと診断された時点でまとめて100万円が受け取れるというものが多いです。
ただし、がんに罹るかどうかはわかりませんから、その100万円を確実に受け取れるという保証はありません。
さらに、その分保険料の支払いも上乗せされているということを忘れてはいけません。
本当に起こるかわからない“もしも”に、いくらかけるのか?
どれだけの保障があれば、日々を安心して暮らすことができるのか?
これによって、医療保険に入る・入らないという選択をすればよいのです。
ちなみに、私は医療保険には入っていません。
理由としてはいくつかありますが、
- がん家系ではないから
- まずは公的セーフティネットでどうにかするから(1年くらいなんとかなる貯蓄がある)
- ローンがなく、毎月の支出が少ないから(車も持ち家も処分しました)
- いざとなったら、実家に頼って更に生活コストを下げることができるから
- 自宅近くの通える県内に、先進医療の受けられるような大学病院がないから
- 延命治療を望まないから
- 持病はあるが、長期入院になるような疾患ではないから
- 国の方針により、どの疾患に対しても入院日数を減らしているから
こういった理由です。
私には持病があるので、今から医療保険に入ろうと思うと保障はその持病以外のものと条件がつけられたり、保険料が高額になったり、免責期間(保険会社が保険料を支払わない期間)が長く設定されたりします。
また、国の財政を圧迫する医療費増大の対策として医療報酬がたびたび改定され、今では抗癌剤治療でも1週間も入院しなくなりました。
投与の間だけ入院ということもあれば、抗癌剤そのものを特殊な装置に付けて自宅で持続注入する、という方法も一般的になったからです。
過去には入院日額5000円で医療保険に入っていましたが、これで元をとろうとすると、私は毎年1週間入院しなくてはいけない計算となります。
そんな病気にかかる確率は、どれくらいあるでしょうか?
これらの理由から、私は医療保険を解約しました。
あくまでも私は、ですけれどね。
かといって、全く生命保険に入っていないというわけではありません。
死亡時と教育資金、それから老後資金に対する備えはしています。
もしあなたが、子ども3人を抱える父親で、妻は専業主婦、車も家もローンを抱えており、1か月でも収入がダウンしてしまったら生活できない・・・という家庭ならば、入っておくべきなのかもしれません。
しかし、私は保険に頼る前にこちら(生命保険を考える前に~まずはご自身の現状と未来の予定を見つめ直そう~)でお伝えした通り、お金をかけない生活を基盤とすることで、リスクを分散させることにしました。
自分が何に対して不安を抱いているのか、どうしても譲れないものは何か、子どもの教育資金にはどれくらいかけるつもりなのか・・・お金にまつわる選択は、本当に悩みます。
しかし、答えなんてないのです。
自分はここで妥協した、というラインをどうとるかなんですね。
まずは自分のライフプランを立てた上で、自分の弱み(将来への漠然とした不安はどこまで想定すべき?でお伝えした、SWOT分析をしてみましょう)を補完するものとして、医療保険を検討してみてはいかがでしょうか。
入るかどうか、どの商品を選択するかはその後でも遅くはありませんよ(*^-^*)