「保険金不払い条項が多すぎる」~よくある生命保険のムダ03~

保険金不払い条項

生命保険をめぐるトラブルは、毎年7000件以上!?

毎月多額の保険料を納めている私達。
当たり前のように払い続けている保険料は、総額にするとものすごい額になります。

生命保険が「人生で2番目に高い買い物」になるかどうかはあなた次第!?>でお伝えした通り、生命保険はマイホームに次ぐ高額支出となる可能性があるのです。
もちろん、車を頻繁に買い替えたり、教育費が突出して高い家庭もありますから、人生における支出の順位が本当に2位になるとは限りません。

せっかく保険料を納めて加入するのですから、家族にもしもの事態が発生した、緊急事態に陥ったときには、速やかに支払ってもらえる保険でないと困ります。
私も何度か入院・手術給付金の請求を行ってきましたが、公的機関の還付金などとは違い、1か月経たずに指定口座に振り込まれたので「早いなあ」と思いました。
早い時は、2週間かからなかったのではないでしょうか。

しかし、今まで何年も保険料を納めてきたというのに、「ここぞ」という時に保険金や各種給付金が支給されなかったという例が後を絶ちません。
独立行政法人国民生活センターには、生命保険に関する相談が毎年7000件以上寄せられており、保険料不払事例のように、保険金(この事例では解約返礼金)の支給をめぐる裁判は、実際多く発生しているのです。

それまで苦しい家計から保険料を払い込んできたのは、もしもの時に医療費や生活費・教育費に困らないようにするため。
逆を言えば、困ったときに支払われないものならば、加入する価値はない、ということです。



保険金が支払われないって、どういうこと?

生命保険をめぐるトラブルで多いのは、やはり「保険金・給付金の不払い」です。
他にも、解約返戻金が少なかったというトラブルもあります。

私自身、解約返戻金を見越して加入している生命保険がありますので、ここは我がこととして調べてみました。
保険金の不払いは、どのようなときに、何が理由で発生するのでしょうか?

<保険金や給付金の不払いは、どんなときに起こる?>

1.免責事由に該当する場合
支払事由に該当しても、免責事由に該当した場合

2.支払事由に該当しない場合
約款所定の支払事由に該当しない場合 例)高度障害(後で詳しく説明致します)
責任開始時前の不慮の事故や、疾病を原因とするときなど

3.契約が失効している場合
保険料の払い込みがなく、契約が失効したあとで支払事由に該当したとき

4.詐欺による取り消しに該当する場合
詐欺行為による取り消しの場合
(保険契約の締結・復活などに際して詐欺行為があったとき、保険会社は契約を取り消すことができ、保険金もすでに払い込んだ保険料も、払い戻されません。

5.不法取得目的による無効の場合
不法取得目的による無効の場合
(契約者が保険金を不法に取得する目的か、または他人に保険金を不法に取得さ
せる目的をもって保険契約の締結・復活などされたとき)

6.告知義務違反による解除の場合
告知内容が事実と相違していたため、告知義務違反により契約を解除されたとき
 (すでに保険金を支払っていたときは、その返還を請求し、すでに保険料の払い
込みを免除していたときは、その保険料の払い込みの免除を取り消します。)

この中でわかりやすいものは、3の保険料の不払いと、4・5の犯罪行為ですね。
保険料を納めるという前提を無視したり、保険料を生命保険会社からだまし取る犯罪行為で、保険金を受け取れるはずがありません。
この場合は、生命保険会社が一方的に契約を解除することもできるし、それまで払い込んでいた分の保険料も解約返戻金も支払われません。(当然です)

逆に、わかりにくいもの、また意図せずして引っかかってしまうのが、残りの1・2・6です。
1・2・6は解釈に悩むものも多く、その解釈の違いが訴訟問題となっているのです。

よくわからない解釈 ~高度障害の認定には、高い壁~

これまで、生命保険はいくら加入していても、本当に困った時に保険金・給付金を受け取れない事例が多いこと、そして不払いの原因はわかりにくいものがあることもお伝えしてきました。
では、そのわかりにくい具体的な例を挙げてみましょう。

まず、<保険金・給付金の不払いは、どんなときに起こる?>の「1.免責事由に該当する場合」です。
そもそも、この「免責事由」って何よ?という感じでしょうか

免責事由とは、保険金・給付金に対する「例外」のことで、いくら支払事由に値したとしても、この例外的条件に該当した場合には保険金を支払いませんよ、というもの。

よくドラマや小説で、保険金受け取り目的の自殺・殺人事件では生命保険が受け取れない、と言っているのを見かけますよね?
あれがそうです。
だからこそ、ドラマや小説の世界では事故に見せかけたトリックを使うわけです。

<生命保険の免責事由とは?>

  1. 責任開始の日からその日を含めて3年以内の被保険者の自殺
  2. 保険契約者または死亡保険金受取人が故意に被保険者を死亡させた場合
  3. 戦争その他の変乱により、被保険者が死亡したとき

おわかりの通り、ごくごく普通に生活している分にはこれらの事象が起こることはありません。
ですから、保険金の不払い問題の理由として多いのは、この免責事由ではありません。

では、<保険金の不払いは、どんなときに起こる?>の、「2.支払事由に該当しない場合」は何でしょうか?
例として、高度障害保険金を挙げてみましょう。

高度障害保険金は、高度な障害を負った場合には死亡していなくても保険金が受け取れますよ、というもの。
「高度障害」は、保険料の払い込みが免除されるという契約もあるので、ちょくちょく出てくる言葉です。

以下はメットライフ生命のご契約のしおり・約款から抜粋した、脳梗塞によって障害を負った契約者が、「高度障害」に値するかどうかという事例紹介です。

お支払いできない場合
ご契約後に発病した「脳梗塞」の後遺症として左半身の麻痺が生じ、入浴や排泄の後始末、
歩行については、いずれも常に他人の介護を要する状態ではあるものの、右半身は正常に
動かすことができ、食事の摂取や衣服の着脱、起居は自力で行えるとき。
お支払いする場合
ご契約後に発病した「脳梗塞」の後遺症として全身の機能が低下し、食事の摂取、排泄や排泄の後始末、衣服の着脱、起居、歩行、入浴の全てにおいて、自力では全く不可能で、常に他人の介護を要する状態に該当し、かつ回復の見込みがないとき

<解説>

高度障害保険金は、責任開始時以後の疾病や傷害を原因として所定の高度障害状態に該当され、かつ回復の見込みがないときにお支払いします。
したがって、所定の高度障害状態に該当しない場合にはお支払いできません。
なお、高度障害保険金の支払対象となる所定の高度障害状態は、身体障害者福祉法などに定める障害状態などとは異なる場合があります。

つまり脳梗塞を発症し、仕事ができるような状態ではなくても、半身麻痺の場合は「高度障害」にはならないということです。
私の加入している生命保険も、死亡時と高度障害時に保険金を受け取ることのできる契約ですが、半身麻痺では支払事由にならないというのです。

しかし、半身麻痺で完全に社会復帰できる人は、現実は限られた少数の人達です。 
運よく利き手が動いたとしても、パソコン作業も両手を使うのが基本。
麻痺が残った人で、発症前のような生活と収入を確保することは、かなり困難です。

それでも、生命保険の世界ではこれは高度障害には認められない。
片麻痺なら、介護保険で「要介護」の認定がおりることだってあります。

それでも、「高度」ではないということです。
ここについては、<解説>の最後の一文で補足されています。
公的な障害とは基準が違いますよ、自分達の基準で決めますよ、ということです。

こんなことまで!? 告知義務の意外な落とし穴

生命保険でトラブルになる原因として支払事由による解釈と並んで多いのが、<保険金や給付金の不払いは、どんなときに起こる?>の、「6.告知義務違反による解除の場合」です。

告知義務違反とは、加入時に健康状態を正しく申告しませんでしたね、というものです。

告知は、生命保険会社が契約を引き受けるかどうか決定する重要なもので、過去の病気を正しく伝える必要があります。
これに違反して過去の病気を隠した状態で加入した場合には、告知義務違反となってペナルティが課せられます。

以下も同じく、メットライフ生命のご契約のしおり・約款から抜粋した、「告知義務違反」をした加入者に対する対応です。

正しく告知されない場合(告知義務違反)のデメリット
告知していた内容が事実と違った場合、責任開始の日から2年以内であれば、告知義務違
反として契約を解除することができます。
この場合、保険金・給付金なの支払いはありません。

結構厳しいですよね。
病気を黙って加入して2年以内に生命保険会社側に知られたら、勝手に契約を解除されるということです。
その際、今までいくら払い込んだかは関係なく、解約返戻金の払い戻しもないということです。
当サイトでも何度か触れている告知義務違反ですが、隠さず告知しましょうと繰り返しお伝えしているのは、このようなペナルティが待っているからなのです。

正直に、そして悪気なく告知義務違反を起こしてしまうこともあります。
それは、自分ではこんなの関係ないよね?と、数回の外来通院で済んでしまったものを、告知しなかったケース。
後々、この時点で健康状態は悪くなっていたのにそれを隠して加入した、ととらえられてしまうのです。

そして意外な告知すべき内容が、職業。
告知内容には、過去の病歴だけではなく、職歴も含める必要があります。

例えば、粉塵の舞う工場や建設現場で働いていた人が、その後何らかの呼吸器疾患に罹って入院した場合、職業との関連はあるでしょうか?
ある、とられてしまいます。
本当に因果関係があるかどうかはわからないこともあるかと思いますが、生命保険会社に保険金を不払いにする理由を与えてしまうことになるのです。

ですから、悪意なく昔の勤め先を書かずにいると、告知義務違反になりかねません。
同様に、喫煙や飲酒についても、わからないだろうと思って喫煙なしと書いていても、後日レントゲン所見から、喫煙の影響による肺気腫が発見され治療する・・・ということもありえます。

ですから、どんな小さなことでも告知しておくべきですし、ましてや「見つからなければラッキー♪」と、嘘や過去を隠して新規契約を結んではいけないのです

どうせ支払われないなら、入るだけ無駄なのか?

生命保険って、保険金・給付金を受け取れないことが多いなあと感じますね。
これだけの不払い条項がある中で、生命保険に加入することは、本当に必要で意味があるのでしょうか?

ここからは個人の価値観になってしまいますが、私は不払いの可能性をわかっていて加入する分にはよいと思います。
逆に、余裕資金がないのに高額な生命保険に加入して、結局不払いとなってしまった場合は、目もあてられません。

ですから、この「ムダ」シリーズを読破して、自分は生命保険にどのくらいかけても生活に支障がないのか、精神的にもストレスがかからないのか、ここを考えてみて欲しいと思います

よくある生命保険のムダ01「二重の保障、重複」
よくある生命保険のムダ02「高額すぎる死亡保障」
よくある生命保険のムダ04「高額すぎる医療保険」
よくある生命保険のムダ05「公的な社会保障を知らない」

確かに、生命保険には不払いのリスクも存在します。
しかし、<経験した実際の生命保険関連の事例15~「シングルペアレントの私が、生命保険に加入する理由」~>でお伝えしているように、メリットもあるのです。

一律に生命保険はムダと切り捨てるのではなくて、預貯金や社会保障と組み合わせて資産の一つとして組み入れるものだと思います。
大切なことは、私達は総額で何十万・何百万という買いものをしているという意識をもつことです。

もしもの生活を考えるのなら、
1.生命保険に加入する
2.もしものときの現金も貯める
3.自分達が受けられる社会保障制度は何があるのかを理解しておく

この3つのバランスをどうとるかが、その家庭ごとの家族構成や収入・価値観によって変わるのではないでしょうか。

人はいつか、必ず死を迎えます。
ですから、保険金を受け取れる可能性が高いのは、死亡保障です。

医療保険の場合は、支払事由を満たすことが少なく、また不払い問題も多いです。
しかし、死亡保険なら、まだ若くて健康なうちに加入しておけば、既往歴など告知義務違反も限りなくゼロにできるし、保険金を受け取れる可能性が高くなりますよね。

できるだけ若いうちに、お金や制度に関する知識を付けて、上手に生命保険と付き合いたいものですね(*^-^*)