「ヘルペス」によるリスクと医療保険

ヘルペスと生命保険

ヘルペスって、どんな病気?

ヘルペスと聞くと、体調の悪いときや疲れているとき、ストレスのかかっているときに唇にできるブツブツを思い浮かべるのでは?
なんとなくむずがゆくて、気づいた頃には水ぶくれのようなものができているのが、口唇ヘルペス。

繰り返す人は、何度も繰り返します。
私も何度かできたことがあります。

一度できると水ぶくれが気になってかじってしまい、そこからまた広がって・・・と、完治までに1か月かかったこともありました。
口唇ヘルペスができるときは栄養状態も悪いからか、私の場合はたいてい口角炎と同時にできます(*´Д`)

実は「ヘルペス」というのは口唇ヘルペスだけではないことをご存知でしたか?
ヘルペスは正式な病名ではなく「ヘルペスウイルス」という、ウイルスの名前です。
ヘルペスウイルスの大きな特徴は、一度感染すると生涯体の中に潜伏し、宿主の免疫力が低下したときに再活性化して、症状を示すことです(これを回帰感染といいます)。

<ヘルペスウイルスの種類・主な病気の図>

太字で示してあるものが、一般的になじみのある病気です。
口唇ヘルペスは、ヘルペスウイルスの中でも「単純ヘルペスウイルス」の感染によるもので、初回感染も回帰感染も口唇ヘルペスとして症状が出ます。

注目して欲しいのは、下の「水痘・帯状疱疹ウイルス」です。
水痘というのは、水ぼうそうのことです。
帯状疱疹は、顔・身体・頭などに、帯状に連なる発疹ができるものです。

口唇ヘルペスも水痘も帯状疱疹も、原因となるウイルスは、全て「ヘルペスウイルス」の仲間で、親戚のようなものなんですね。
ただし、水痘・帯状疱疹ウイルスに感染したときは、初回感染時には水痘として発症し、回帰感染したときには帯状疱疹という別の病気として現れます。

ヘルペスの治療は、基本的には抗ウイルス薬の内服で済みますから、外来通院で済みます。
しかし、帯状疱疹については内服治療では対応しきれず、点滴治療が必要になることがあります。



たかがヘルペスでも、初期治療を怠ると大変なことに!?

ここからは、水痘帯状疱疹ウイルスに焦点をしぼってお話していきます。
ヘルペスが厄介なのは、回帰感染です。
水痘に罹ったことがある人、ウイルスは身体に入ったものの発症しないで終わった人も、一生回帰感染を起こすリスクを抱えるのです。

一度体に入ったウイルスは、普段は身体の神経節やリンパ組織などで潜伏しています。
(初感染の水疱瘡は子供のときのことで、記憶にないかもしれません。)

1年のうち、仕事を休んだり寝込んだりするまでいかなくても、(少し疲れたな)程度は誰しもあるもの。
このような宿主の免疫力が低下したときに、ウイルスは活性化します。
そして、回帰感染で発症する帯状疱疹は、合併症や後遺症を残すことがあります。

<帯状疱疹の合併症>

  1. 眼合併症:眼神経エリア(顔面)の帯状疱疹で起こる結膜炎・角膜炎・(ごくまれに)急性網膜壊死による失明
  2. Ramsay Hunt(ラムゼイ・ハント)症候群:耳に近いエリアの帯状疱疹で起こる顔面神経麻痺・内耳神経障害(耳鳴り・めまい)
  3. 帯状疱疹後神経痛:帯状疱疹による皮疹が消えたあと(3か月以上)持続する神経痛

          
帯状疱疹は、初期の頃に抗ウイルス薬の内服を始めると、発疹と合併症の程度を抑えることができます。
口唇ヘルペス同様、発疹ができる前にムズムズ・ピリピリという前駆症状がありますから、この症状が出たあとに水疱ができたら、早期受診・早期治療を受けることが大切です。

帯状疱疹の合併症の中で最も多い神経痛は、日常生活にも支障をきたすことがあります。
何年間も内服治療を要したり、それでも改善できずにペインクリニックに通ってブロック注射を受ける人もいます。
お腹の手術を受けても数か月後でピンピンしている人もいるのに、帯状疱疹で何年も痛みを抱える人がいるのです。

合併症は個人差がとても大きく、自分がその後どの程度の痛みを抱えるのか、発疹が出た
段階では予測できません。
ですから、帯状疱疹と思われる発疹が現れたら、早期に抗ウイルス薬による治療を受ける必要があるのです。

受診したときに発疹がプツプツ出ている程度なら、内服治療で乗り切れます。
痛みも、状況に応じた鎮痛薬を処方してもらうことで対応可能です。

しかし、既に発疹が帯状で広範囲に及ぶ場合、痛みがひどくて動けない場合には、点滴による抗ウイルス薬の投与や疼痛コントロールが必要になります。
抗ウイルス薬を点滴で投与することになると、基本的には入院になります。

点滴の場合は、1日3回、8時間おきに投与することが基本です。
そうなると、どうしても日中の外来だけでは対応できません。
入院して日勤・準夜・深夜と各勤務で1回ずつ行う(医療機関によって日勤で2回、準夜1回のこともあり)ことになるのです。

ヘルペスの治療と生命保険の関係

さてここで、生命保険とヘルペスウイルスを関連させて考えてみましょう。
まず、入院治療か外来通院かで大きな分かれ道があります。

外来での内服治療だけなら、入院も手術もありません。
高額医療になることもありません。
ですから、制度的には保険診療で3割(高齢者は1割)の治療費がかかるだけで、他に公的補助を受けることはありません(生活保護・一部母子家庭を除く)。
特に口唇ヘルペスの場合、生命保険が介入する余地はありませんね。

しかし、帯状疱疹による入院治療の場合はどうでしょうか?
点滴治療は、1日3回投与を7日間続けます。
ですから、最低でも7日間の入院期間となります。

もしあなたの加入している生命保険が入院当日からの入院給付金が付いているのなら、「入院日額×7日分」を受け取ることができます。
痛みがひどくて食事がとれない、痛みのコントロールがつかないなら、もう少し入院期間が長くなるかもしれません。

また、発疹は時間の経過とともに、水っぽくジュクジュクしていたものが、痂疲(かさぶた)化して、治癒するのが通常の過程です。
ところがそこに別の細菌感染によって化膿すると、皮膚の処置が必要になることもあります。

点滴治療と投与後の状態により、入院期間は「7日+α」と考えることができます。
生命保険会社に提出する診断書は1通7000円~10000円ほどかかりますから、それを出してもリターン(給付金)が高ければ、入院給付金を請求するとよいでしょう。
もちろん、入院給付金の出るタイプの医療保険に加入していれば、の話です。

もう一つ、発疹の治癒後にも、帯状疱疹は通院治療を必要とすることがあります。
合併症である神経痛がひどい場合ですね。
通常の鎮痛薬(ロキソニン®・カロナール®など)で効果のない場合、神経に作用するタイプの内服(リリカ®)になります。

リリカはかなりフラフラするくらいの作用がある薬ですが、処方が続くと、定期通院をしている持病(現病歴)という扱いになります。
帯状疱疹の薬を7日間処方された分だけ飲んで治癒した場合なら、生命保険の加入時に告知する必要性は低いかと思います。
しかし、合併症のある場合には、確実に告知義務があります。

薬を長く使うということは、それによる身体の影響が必ずどこかにあります。
コントロール不良のため、入院するかもしれません。
そうなると、保険会社は後日、入院給付金を支払うリスクが発生します。
あなたはリスクの高い契約者になってしまい、特約を付けられたり、保険料が高くなるかもしれません。(でも、隠すのはダメですよ。)

ヘルペスと聞くと、
(なーんだ、あの唇にできるヤツね)
と思うかもしれません。

ヘルペスには帯状疱疹よりもっと怖いヘルペス(脳炎を起こします)もあります。
もしかしたら、既にあなたの体にも潜伏しているかもしれないのです。

たかがと思うか、それとも一生ものの付き合いになるかもしれないと思うかは、人それぞれ。
「水虫」がもたらす影響と生命保険>でお伝えしたように、どんなに軽症の病気であっても、いつ別の病気を合併するか、どのくらい悪化するかわからないのです。

帯状疱疹に限らず、いつ生命保険に助けられるかわからない・・・ってことになるでしょうか。