あなたは毎日、ぐっすり眠れますか?
私は布団に入って5分も起きていることがありません。
夜、家事を終えて座って本を読んでいるとすでにコックリコックリ・・・という具合です。
しかし、世の中には不眠症に悩む人が少なくありません。
寝つきの悪い人、夜中に起きてしまう人、朝早く目が覚めてその後眠れない人・・・不眠症といっても症状はさまざま。
不眠症は、実は身近な病気
そもそも不眠って、どんな状態のことを言うのでしょうか?
不眠症は、睡眠障害国際分類第2版(ICSD-Ⅱ)において、下記のよう定義されています。
『睡眠の開始と持続、一定した睡眠時間帯、あるいは眠りの質に繰り返し障害が認められ、眠る時間や機会が適当であるにもかかわらずこうした障害が繰り返し発生して、その結果何らかの昼間の弊害がもたらされる状態。』
わかるような、わからないような・・・なぜこんなわかりにくい言葉で定義付けするのでしょうね?
不眠症についてはアステラス製薬のサイトが、わかりやすくまとめてありますので、参考になります。
少しわかりにくいので、私なりに簡単にまとめてみましょう。
「不眠」は、下の3つのどれかにあてはまる状態のことを示すと考えます。
【1】睡眠の質・量に問題がある:なかなか寝付けない、夜中に起きる
【2】睡眠の時間帯に問題がある:夜眠れないのに昼間眠くなる
【3】睡眠中の異常現象 :睡眠中のいびきや呼吸停止、ねぼけ
とくに【3】の睡眠中のいびきや呼吸停止は、昼間に猛烈な眠気が襲ってくるため、運転や危険作業に従事する人にとっては大問題です。
睡眠時無呼吸症候群という病名がつくと、保険診療によって夜間自宅で装着するCPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)という機械を着けて、いびきと舌根沈下による呼吸停止を防止する治療をします。
しかし、【1】のなかなか寝付けないという症状が、単発で月に数日あるという程度の場合、不眠症になるのでしょうか?
NHKの「ためしてガッテン」で『睡眠薬が糖尿病に効く』と報道して、大問題になったことがありましたね。(NHKは翌週の番組内で謝罪を流しましたが、医療現場では非常に混乱を招きました)
実際にテレビの放送後に私の勤務する病院にも、「糖尿病にいいと聞いたから睡眠薬ください」と言ってきた人がいました。
結局、「糖尿病に効くという根拠はない」と医師は突っぱねましたが、患者さんは「最近寝つきが悪い」と言い張り、睡眠導入剤を頓服で10回分処方してもらいました。
病院で睡眠薬を処方してもらい、それを単発で眠れないなあという日に飲む・・・実はよくあることです。
でも、この患者さんは不眠症という病名がついてしまったことに、気づいていません。
頭痛持ちの人が常に痛み止めを常備しておいて、痛むときだけ飲むということはよくあること。
それと同じことを、「たまに眠れないことがある」人がしたらどうなるのでしょうか?
単発使用ならば、医療においてはOK、というか問題にはなりません。
(本当は適度な運動など、生活習慣の改善で眠れるようになるのが望ましいのですが。)
保険請求を通すために病名を付けますが、本当にひどい精神状態にあるとは思っていません。
しかし、生命保険ではこれがNGになってしまうのです。
なぜでしょうか?
それは、睡眠薬の処方を受けた時点で、その人が「精神疾患」と判断されるからです。
不眠症は、精神疾患!?睡眠薬を処方されると生命保険に入れないという事実
私の職場の人が、たまに眠れないことがあるといって、睡眠導入剤を処方してもらいました。
仕事をしているとストレスの重なる時期があったりするのは、仕方のないこと。
その時は産休・育休でメンバーが減ってしまい、忙しかったのです。
その人は疲れすぎて眠れない、でも寝ないと体がもたないという日に、“たまに”服用する程度でした。
睡眠薬といっても、寝入りを助けてくれる程度のものから、長時間作用するものまで種類はさまざま。
彼女は、一番入口にあたるマイスリーという薬を処方してもらいました。
その後仕事は落ち着き、眠れないこともなくなったので、彼女はマイスリーを使わずに眠れるようになりました。
眠れないことがあったということも忘れかけていた時、今まで加入していた生命保険を解約して、新たに加入することにしました。
ところが、病気らしい病気をしたこともないし、私と違って妊娠・出産(生命保険と健康状態の関係「帝王切開」)で生命保険を使ったこともない彼女が、生命保険に入れなかったというのです。
それは、一時使用していただけで、今は服用していないマイスリーのせいでした。
実は彼女、自分が使わなくなっても時々処方してもらって、お母さんに分けていたというのです。
よくあることなのですが、家族で薬をまわすのは本来違法。
その人の症状に対して医師が必要と判断して処方されて、初めて保険診療なのですから。
実際は睡眠薬に限らず、痛み止めや湿布、漢方薬などは「知り合いからもらってよかったから、これをください」と、診察室で堂々と言う人が後をたちません。
本人達からすると頭痛時に飲む痛み止め感覚なのかもしれません。
しかし、睡眠薬は薬剤によっては副作用も大きく、また犯罪に使用されることもあるので、内服薬であっても厳重管理を求められるのです。
生命保険の世界では、睡眠薬を処方している人は皆、「精神疾患」とみなされます。
病気の告知義務違反についてはこれまでも何度か触れてきましたが、実際に告知した結果、過去の病気について「治った」とみなされるのは、たいてい2年の年月が必要です。
私の場合は社会人1年目で喘息と診断され、その後薬を欠かすことができなくなりました。
今後も、全く薬なしの状態にはなりません。
成人発症の喘息は、発作を起こさない状態をキープすることが治療目標であり、完治することはないからです。
今回の知人のように、仮にマイスリーの処方を受けたことが過去にあっても、2年以上処方していなければよかったのですが、数か月ごとに母親用に処方を受けていたことが失敗でした。
(繰り返しますが、これは絶対にいけません!!)
黙っている訳にもいかず、かといって話せば精神疾患という重大な病気という扱いを受け、彼女は新たな保険に加入することを辞めました。
救いだったのは、以前から入っていた保険をまだ解約していなかったことです・・・。
軽い気持ちの睡眠薬で、まさか生命保険に入れないと知っている人、意外に少ないと思います。
睡眠薬を必要としている時というのは、心身ともに辛い状態にあることが多く、そんなときに生命保険の新規加入に支障がでるなんて、考えないのが普通。
働きざかりの40代・50代はまだ、生命保険に新規で加入することもあるでしょう。
しかし、この年代が結構ストレスを抱え、不眠症に悩んでいたりします。
本当に不眠で困っている人が、医師の指示のもとで正しく服用するなら問題ありません。
でも、睡眠薬と痛み止めでは、生命保険各社の扱いは大きく違うのです。
「ちょっと眠れないときがあるから」程度の軽い気持ちで睡眠薬を処方してもらうと、生命保険に入れなくなってしまうのです。
全ての保険会社の全ての商品がダメではありませんが、ほぼ認められないのが現状です。
私も実際に聞いてびっくりしたケースでした。
安易に薬に頼ってはいけないということですね。
何よりも、自分の名前で処方を受けるということは、自分のカルテに病歴を残すということ。
それは生命保険の契約の可否だけではなく、引き受け条件にも影響してくるのです。