私達の身近なところにある、アレルギー。
花粉症のように命に直結しないものもアレルギーです。
また、特定の食品によって起こるアナフィラキシーショックも同じアレルギーです。
花粉症もアナフィラキシーショックも、全部“アレルギー”
食物アレルギーを巡っては、平成24年12月に、食物アレルギーを持つ小学生の女児が、おかわりしたチジミ(本人用のものと違い、アレルゲンであるチーズを含む)を食べて亡くなってしまうという、いたましい事故も起きています。
アレルギーというのは、簡単に口にされる割に、その怖さを知っている人は少ないように思います。
私は、アレルギーによってショック状態に陥る、アナフィラキシーショックをこの目で見ているので、その怖さがわかります。
ある日、20代の女性が気分不快を訴えて、受付終了間際に飛び込んで来ました。
新規の患者さんだったので、保険証を受け取って新患登録などをしている間に、急激に状態が変化しました。
私はちょうど受付に別の用事があったのでその場に居合わせたのですが、受付前の長椅子に座っていた女性が、椅子に寝転がったのです。
その様子が、だるくて寝たのではなく、明らかに「倒れ込んだ」様子だったので、これはおかしいと思いました。
応援を呼び、ストレッチャーに乗せて処置室へ運びこむ間に、状態は更に悪化。
明らかに、声が出なくなっているのです。
呼吸も早く、あえぐようになりました。
なんとか聞き出した範囲で推測すると、女性は複数の食物アレルギーをもっていました。
頂き物のクッキーを食べたところ数分後から蕁麻疹が出たため、職場の人に連れて来てもらって病院を受診しました。
そして、あれよあれよという間に悪化したようです。
半分意識を失っている女性に酸素マスクを当て、酸素を流しました。
このままでは、血圧も低下してショック状態になることが予想されました。
「アナフィラキシーです!!」と声を上げ、急いで医師を集めて処置に入りました。
まずは血圧を上げるアドレナリンの注射を打ちました。
しかし、救急に慣れた先生がいなかったので、次に投与する薬を相談し始めたドクター達。
そんな時間ないわ!!と、私は薬局に電話をかけました。
まず若い子が電話に出ましたが、この子では無理だと思い、無理矢理電話口に薬局長を引っ張り出しました。
「アナフィラキシーショックの女性がいます。
今、アドレナリンを打ちました。
このあと必要な薬一式、そろえて外来に駆けつけてください!」
こう言われて、「こんなことで俺を呼び出すな」なんて言う医療従事者はいません。
いたら辞めるべきです。
もちろん、薬局長はフル回転で頭を働かせて薬剤を届けてくれました。
まず足の速い若い子に持たせて、そのあとで自分も追いかけて来ました。
その判断、ナイス!と思いました。
私の勤務する病院は、増改築を繰り返した関係で、薬局と外来がものすごく離れている上に、階段の上り下りもあるのです。
お腹の出た薬局長より、経験はないけれども体育会系の若者に持たせた方が、薬剤が早く外来に届きます。
この女性はその後本当に血圧も下がり、人工呼吸器を使うかどうかというギリギリのラインまで行きました。
(本来、このようなときにはどんどん気管挿管をしておくのが教科書的なのですが・・・。)
各部署の連携のおかげで、彼女は片足をツッコミかけていた“向こうの世界”から、“こちらの世界”に戻って来て、翌日無事に退院することができました。
アナフィラキシーショックは救急の講習で習っていましたし、シミュレーション的なことも練習してはいましたが、それでも本物を見たのはこの時が初めて。
本当に「アレルギーって怖い」と実感しました。
それからというもの、私は「蕁麻疹」と聞くと、必ず呼吸状態をチェックするようになりました。
アレルギーって、結局なんなの?
花粉症も、ハウスダストも、薬のアレルギーも、食物アレルギーも、全て身体が過剰反応を起こした結果起こるアレルギーです。
しかし、その程度はピンキリ。
では、アレルギーとはどういう状態のことを言うのでしょうか。
厚生労働省発表の『アレルギー疾患対策について』によると、アレルギーとは
- 免疫反応に基づく生体に対する全身的または局所的な障害を指す
- 血中抗体による液性免疫反応に基づくアレルギー(Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ型アレルギー)と感作リンパ球による細胞性免疫反応に基づくアレルギー(Ⅳ型アレルギー)に大別される
(広義の)アレルギーの定義 - アナフィラキシー:アレルゲンの侵入により、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応
とあります。

少し言葉が難しい(民間人向けの情報であるにも関わらず)のですが、要はアレルギーというのは、「自分で自分を攻撃してしまう病気」です。
本来は、身体に対して害である病原菌などに対して働くべき免疫作用が過剰に起こってしまい、害ではないもの(花粉やハウスダスト、特定の食品)まで「敵」と認識して攻撃してしまうことです。
アレルギー体質の人が、生命保険に加入するには?
<「喘息」持ちの方が知っておきたい生命保険加入の条件>や<よくある生命保険のムダ04「高額すぎる医療保険」>、<「花粉症」でも生命保険加入時に申告が必要?>に出て来た気管支喘息や関節リウマチ・花粉症もアレルギーの一種で、Ⅰ型とⅢ型に含まれていますね。
アレルギー疾患というのは、本当にざっくりいうと体質の病気。
子供の頃の食品アレルギーは、年齢を重ねると克服できるものもありますが、ほとんどのアレルギー性疾患は一生の病気です。
花粉症も、ある年に発症したら、それ以降ずっと続きますね。
命が脅かされることはありませんけれど。
上の表の中には、難病指定されているものも含まれます。
治療にステロイドを使用することもあり、<「インフルエンザで人工呼吸器装着」~実際の生保事例17~>のように、ちょっとしたものが重症化してしまうこともあるのです。
アレルギー性疾患というのは、それだけ治らない上に厄介だということですね。
私も、気管支喘息以外にこの中に含まれる病気を抱えているのですが、アレルギー体質に効くとされる薬は、あることはあります。
毎月57000円(3割負担)で、現時点では一生続ける必要があると言われたので、辞めたけれど。
生命保険会社にとってはこのようなアレルギー性疾患は、このあとどのような転機をたどるのか、予測しにくい病気なのです。
生命保険は、計算に計算を重ねてはじき出した金額を保険料として集め、請求されたときに契約者へ支払う保険金や各種給付金の原資とします。
それなのに、予測以上の支払いをしてしまうと会社が破綻してしまいますので、リスクの高い人には高い保険料をもらうか、引受拒否として保険金や各種給付金・年金を払う可能性の高い人は避けるようにしているのです。
アレルギーというのは、一生お付き合いしなくてはいけないものです。
そして、それはいつ・誰が・何に対して起こすかわかりません。
知り合いの女性は、日本人なのにお米が食べられません。
アレルギーって、簡単に使われがちな言葉ですけれど、実はとっても奥が深く、そして解明されていない未知の世界。
とは言っても、花粉症ならたいていの生命保険には加入できますから安心してくださいね。
ただし、「たかが花粉症」と思わずに、きちんと書面で告知することは、お忘れなく。