毎年冬になると、猛威を振るうインフルエンザ。
1人かかると家族中がダウンするし、最低でも5日間は学校や仕事に行けないので、普通の風邪と違い、やっかいです。
そのため、10~11月になるとインフルエンザワクチンを接種しているという人も多いでしょう。
私も、毎年接種しています。
毎年猛威を振るうインフルエンザ、実は毎年違うモノ
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ型が変化するので、ワクチンはその冬に発生しそうなものを予測して作ります。
ですから、ワクチンの効果が高い当たり年もあれば、外れ年もあります。
また、ウイルスの型が変われば、症状も毎年変化します。
軽症で済んでしまう年があれば、ぐったり・・・という年もあります。
患者さんの様子を見ていても、毎年症状が違います。
2015年冬のインフルエンザは、高熱に加えて嘔吐と下痢を主訴とする人が多く、時期的にノロウイルスか、それともインフルエンザなのか、どちらの検査をするべきか判断に悩むケースもありました。
熱に加えて嘔吐と下痢を生じた場合、必然的に脱水が起こります。
そこで、予備力のない子供と高齢者は、グッタリ。
脱水が極度になると、入院による点滴治療が必要になります。
逆に、2016年冬のインフルエンザはインフルエンザウイルスの影響か、それともワクチンの効果なのか、本当に軽症でケロッとしている患者さんが多かったように思います。
ほんの微熱でも検査をすると陽性が出てしまい、ショックを受けていた人が大勢いましたね。
しかし、そんな軽症の年でも、重症化してしまった人もいます。
それが、<経験した実際の生命保険関連の事例17~「インフルエンザで人工呼吸器装着の重症化」~>でお伝えした、リウマチ治療のためにステロイドを長期に内服していた女性です。
インフルエンザワクチンのこと、誤解していませんか?
インフルエンザから脱水と肺炎を起こし、救急車で搬送されて人口呼吸器につながれて一命を取り留めた女性。
インフルエンザワクチンを接種していたのに感染してしまい、おまけに60代の女性とは思えないくらいに重症化してしまいました。
彼女の場合、重症化はステロイドによる影響が強かったと考えられます。
しかし、もしインフルエンザワクチンを接種していなかったら、どうなっていたでしょう?
本当に、命がなかったかもしれません・・・。
少し生命保険から脱線してしまうのですが、ここでインフルエンザワクチンについてお伝えしておこうと思います。
インフルエンザワクチンは誤った認識をしている人が多く、医療従事者でも一般の人と同じように誤解しているのが実状です。
ワクチンは、「インフルエンザウイルスに感染しないため」に接種するのではありません。
「重症化を防ぐ」ために接種するのです。
厚労省によるインフルエンザQ&Aでも、そのように答えています。
少し長いのですが、「感染」と「発症」の違いも含めて読んでみてください。
Q.18: ワクチンの接種を受けたのに、インフルエンザにかかったことがあるのですが、ワクチンは効果があるのですか?
インフルエンザにかかる時はインフルエンザウイルスが口や鼻から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。
ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が起こります。この状態を「発症」といいます。ワクチンには、この発症を抑える効果が一定程度認められています。
発症後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や御高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。ワクチンの最も大きな効果は、この重症化を予防する効果です。※平成11年度 厚生労働科学研究費補助金 新興・再興感染症研究事業「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷齊(国立療養所三重病院))」の報告では、65歳以上の老人福祉施設・病院に入所している高齢者については34~55%の発病を阻止し、82%の死亡を阻止する効果があったとされています。
以上のように、インフルエンザワクチンは、接種すればインフルエンザに絶対に罹らない、というものではありませんが、ある程度の発病を阻止する効果があり、また、たとえかかっても症状が重くなることを阻止する効果があります。
ただし、この効果も100%ではないことに御留意ください。
(厚生労働省 インフルエンザQ&Aより抜粋)
つまり、発病を阻止する効果もあるけれど、本当に狙っている効果は重症化の予防だということです。
これ、反対だと思っていませんでしたか?
インフルエンザも、告知義務アリ?
インフルエンザは、ワクチンを接種していてもうつるときはうつりますし、ただ高熱が出て長く休まなければならない病気、と思ってはいけません。
ましてや、堂々と学校や仕事を休めるからラッキー♪・・・なんて喜ぶのは、もってのほか。
場合によっては、本当に命取りとなる病気なのです。
その割に結構簡単にとらえられているのは、治癒後の生活には何の支障もないし、定期通院も必要ないからでしょう。
そもそも、昔は今ほど検査の精度が高くなかったし、こんなに簡単で安くインフルエンザの検査ができるキットはありませんでしたから、感染・発症して周囲にウイルスを巻き散らしていたとしても、「インフルエンザ」という診断がおりていなかっただけなのです。
では、これから生命保険に加入しようと検討している場合、インフルエンザは告知義務に入るでしょうか?
かかったかどうかもよくわからない上に、毎年流行するものですからね。
これが既往歴に含まれるのでしょうか?
告知義務を怠るとどのようなペナルティがくだされるかは、<よくある生命保険のムダ03「保険金不払い条項が多すぎる」>の中でお伝えしていますが、今まで払い込んだ保険料が無駄になるばかりか、あなたのもしもに対する備えがなくなってしまうのです。
風邪や市販薬の使用は、原則として告知義務に含まれていません。
インフルエンザは、一応、風邪の一種です。
それに、通常は受診して検査して、診断を受けたら薬をもらって終わり。
外来フォローもなければ、その後定期通院が必要となることもありません。
せいぜい咳がまだ少し残るから・・・と、咳止めが出される程度。
しかし、
- インフルエンザによる入院治療を必要とした
- インフルエンザ治癒後も定期的な受診を必要としている
場合は、告知しておくべきでしょう。
しつこいくらいに繰り返しますが、告知義務違反による契約解除や保険金・各種給付金の不払いほど無駄なものはないからです。
世間一般では、インフルエンザを大きな病気としてとらえる人は少ないですね。
しかし、もしあなたがインフルエンザを契機に継続治療が必要になったり、持病に何もないのに重症化したという場合は、「何か」が隠れているかもしれません。
その「何か」が、生命保険加入後に診断されたとしましょう。
新規加入時に、インフルエンザで入院治療や継続治療が必要だった事実を伝えていなければ、それを理由に保険金や各種給付金の不払いという事態に発展するかもしれません。
生命保険会社へ不払いにさせる理由を作らない、後からペナルティを科せられるくらいなら、最初から出しておく。
告知に対する私達加入者側の姿勢として、このくらいシビアにしておくと、あとから「こんなハズじゃなかった・・・」と肩を落とさずに済むのではないでしょうか。
世の中には、告知義務違反を強要したり、口頭で言ったのに聞いていないフリをして契約書を書かせるような営業マンもいると、耳にします。
しかし、本人が所定用紙に書いて初めて「告知」したことになりますから、あくどい営業マンの口車に乗せられないようにしましょう。
そして、もし本当にインフルエンザが重症化して入院・・・なんて事態になったときには、生命保険に助けてもらいましょう。
生命保険は、加入することが目的ではないのですから。