ウソをついたら受け取れない!!告知義務違反って何?
せっかく入った医療保険、病気になったなら必ず受け取れるはず!
そう思っていませんか?
実は、病気になっても保険金が支払われないケースが存在します。
医療保険に加入して毎月お金を払っていたのは、病気による「もしも」に備えるため。
そこで支払われなかったら、今までの保険料はドブに捨てたようなものです。
それって詐欺じゃない!?
そう思いたくなる気持ちはよ~くわかります。
だって、毎月の生活の中からなんとかやりくりして支払っているのに。
それに、保険料の総額は「人生で2番目に高い出費」(詳しくはコチラをどうぞ。生命保険が「人生で2番目に高い買い物」になるかどうかはあなた次第!)とも言われていますからね。
それだけの保険料を納めているのに、保険金を支払わなくても保険会社が罰せられることはないのでしょうか?
確かに、生命保険業界における保険金の不払い問題は存在します。
大手生命保険会社の不払い問題は、一時期ニュースでも大きくとりあげられましたね。
しかし、これとは別で、生命保険会社側の正当な理由・権利として支払義務のないことがあるのです。
保険料の総額は何百万にもなることがありますから、しっかりおさえておきましょう。
では、どのようなとき、正当な理由があると認められ、保険料の支払いを拒否できるのでしょう?
いくつかあるのですが、今回はその中で、私達保険加入者がやってしまいかねないちょっとしたウソから始まる「告知義務違反」についてお伝えします。
生命保険に加入するときには、現在の健康状態について正直に・正しく申告しなければなりません。
30代・40代くらいまでは、健康で定期通院している病院のない人が多いので、あまり問題になることはありません。
問題となるのは、過去に病気で長期通院や入院をしたことがある場合、もしくは現在治療中の病気のある人です。
過去・現在に病気に罹った人は、所定の手続きをとらなければ新規に生命保険に加入できないことがあるのです。
自分に何か病気があるということを正直に伝えることは、加入者側にとっては実は不利な状況を招きます。
保険金削減特約を付けられたり、既往・現病に関係する疾患は保険の対象外となるといった条件を課せられてしまうことがあるからです。
詳しくは、(「病気があると、生命保険の加入は不利!!」~実際の生命保険関連の事例09~)でご紹介しています。
そのため、中には故意に過去や現在の病気を隠して生命保険に加入する人がいます。
健康診断で引っかかったり、何かしらの自覚症状があり、
(もしかして、癌かもしれない・・・)
そう思っていた場合に、先に生命保険に加入しておいてから治療を受ければ、給付金を受け取ることができますから。
もちろん、生命保険はそんなに簡単に給付金を払ってくれるほど甘くありません。
加入後すぐの給付金の支払いを防ぐというリスクヘッジのため、生命保険各社は免責期間(支払い義務のない期間)を設けています。
たいてい90日に設定されているところが多いですね。
もし自分が癌かもしれない・・・と思ったら、90日も放っておかずに受診するのではないでしょうか?
それだけでも、生命保険会社は不利益を被る契約を避けることができます。
けれども、本人が病気の早期発見と早期治療よりも、各種給付金を受け取ることを目的としていたら?
病気かもしれないという事実を隠し、3か月待ってから受診して治療を開始すればよいのです。
方法をとったのではないかと疑われた症例が、こちら(「最低金額で最大限の保障をgetした男性」~実際の生命保険関連の事例05~)で紹介した運送会社を経営していた男性です。
結果としては、男性は故意に隠していたのではなくて、本当にラッキーにも免責期間をちょうど過ぎたところで病気が見つかったのですが。
制度の抜け道を悪用して医療保険に加入すれば、死亡保険よりも先に、お金を受け取ることができるのです。
本当にそんな人、いるのかなぁと思っていたのですけれど、世の中にはいるんですね。
わざわざ病気を3か月も放置してまで、保険金を受け取ろうとする人が・・・。
保険会社も騙された!
私にはもう8年以上の付き合いになる、保険代理店を一家で経営している知り合いの女性がいます。
親しくなってからは、私にもお得な保険をおススメしてくれるようにもなりました。
その保険屋さんと、お茶しながら情報交換していたときのことです。
「私ね、このあいだ初めてやられましたよ。」
突然そう切り出されました。
話を聞くと、今までにも取引のあった50代の男性が、少し前に医療保険に加入したそうです。
しばらくして病気が見つかったというので、保険屋さんは保険金の請求手続きをとったそうです。
彼女は、常に「お客さんの生活を支える生命保険」を紹介することをモットーとしているので、その時も「ああ、保険が役に立って良かった。」と心から思ったそうです。
そして、悪性疾患(癌)が発見された患者さんに、どのような言葉をかけたらよいのか、自分は保険代理店を経営する身としてこれからどう支えていったらよいのか、いろいろと考えたそうです。
ところが後日、保険会社から“まった”がかかったのです。
そう、3か月の免責期間を経過した直後だったから“アヤシイ”と。
保険金請求に関して不審な点があった際には、保険会社は契約者・非保険者の承諾を得て医師と面談をします。
この面談は保険会社から派遣された担当者と担当医だけで行うので、本人が立ち会う必要はありません。
また、費用は面談に要した時間に応じて保険会社が病院に支払うので、実際に契約者・非保険者の手を煩わすことはほとんどなく、承諾書にサインをするだけです。
そして、この面談において医師は中立の立場で事実を説明することになっています。
患者さんに有利になるように話してもいけないのです。
この面談で重要になるのが、初診日(最初に受診した日)の日付と内容です。
生命保険会社としては、初診日に「悪いものかもしれませんよ」と告げられた後で生命保険に加入したのではないか、と疑っているのです。
もし、全く風邪や花粉症などの別件で受診したのなら、それは全く別物ということで、癌と診断されたことによる受診とは関係ありません。
しかしこの男性・・・やはり、隠していたのです。
気になる症状があって受診し、検査を勧められていたのです。
本格的な検査を受ける前に、男性は医療保険に加入しました。
胃カメラを受けて、その際に病理検査(組織の一部を採取して顕微鏡で見る検査)を行いました。
結果、胃癌と診断されました。
これがもし、数年前から「実は胃がもたれてて・・・」と、定期通院をしていたのなら、それはそれで、加入前に告知する必要があります。
その上で保険に加入し、今回病気が見つかったというのならそれは告知義務違反になりません。
しかし男性は、気になる症状があったことを隠し、またそのために一度受診していたことを隠した上で保険に加入したのです。
明らかに故意の「告知義務違反」です。
保険会社を騙すことは、できるのか?
いつの時点で、病気に気が付いたか?
これはなかなかグレーな面が大きいと、私個人は考えています。
この男性が仮に、4/1に胃痛でAクリニックを受診したと仮定しましょう。
この時に、「胃カメラを受けた方がいいですよ」と言われ、検査まで胃薬を処方されました。
ここで男性が、(本当に癌かもしれない・・・癌と診断される前に、保険に入っておこう)と思い、症状を隠し、「既往歴なし」「通院歴なし」として4/8に新規契約を結びます。
その後、男性は症状を隠したままなんとか耐え、3か月を待って、7/15にBクリニックを受診したとします。
そこでまた胃カメラを勧められ、7/22に検査を受けます。
7/29に病理結果の説明を受け、ここで胃癌と診断されました。
この場合、Bクリニックにおける初診時は7/15になりますね。
実際、同じ病院であっても過去3か月受診がなかった場合には、事務手続き上は前回と別件ということになり、「再診」ではなくて「初診」扱いにされることがあるのです。
同じ病院であっても初診扱いになるこの3か月という期間、なかなか微妙です。
これが違うクリニックであった場合には、いつを初診日とするのか?
また、保険会社がAクリニックの存在に気づくことがあるのでしょうか?
もしBクリニックを受診した際に、「3月から胃が痛かった」と言っていて、それを医師記録に残してあり、更にそれを医師が保険会社との面談で話したとしたら、実は4/8の加入時に既に症状があった、となります。
しかし、もしかしたら男性がAクリニックとBクリニックに病院を変えて、さらに発症時期を医師にごまかして話していたら・・・保険会社に知られることなく、めでたく保険金が支払われたかもしれませんよね?
保険会社も事前事業ではありませんから、追求はすると思います。
でも、やはりうまくというか、ラッキーにも免責期間や告知義務違反をすり抜けて各種給付金を受け取れる人もいるでしょう。
今回、この男性がどういった経緯で告知義務違反が見つかったのはわかりません。
(個人情報ですから、あまり深くは聞けません)
結果としては、この男性は保険会社に告知義務違反がバレ、給付金を受け取ることができませんでした。
これでは、何のために3かげつ治療を先に延ばしたのでしょうか?
実は告知義務違反を勧める代理店もいる?
病気を隠して生命保険に入るのは、明らかな違反です。
しかし、それを保険会社側が行うことがあるといったら、信じられますか?
保険会社の販売員も、代理店の販売員も、契約者に騙されて保険金を支払うことになったとしても、個人的に負債を抱えることはありませんね。
業績不振ということでボーナスが一部カットされることはあるかもしれませんが、自分の契約した人に保険金を支払う事例があったからといって、個人の給与や賞与を減らすということはないでしょう。
(解約者が相次いだ場合などは、わかりませんけれど。)
保険代理店は、契約がとれた場合に各保険会社から手数料を受け取ることを、収入源としています。
そうなると、とにかく実績を残してしまった方が、自分の業績となって収入が増えますね。
そのため、販売員の中には病気を知らないフリ、もしくは聞かなかったことにして契約をとる・・・ということも、あるのです。
販売員が保険会社を騙すわけですね。
だからこそ、生命保険の告知義務違反の定義には、下の文言が含まれているのです。
公共財団法人 生命保険文化センター
http://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/life_insurance_q24.html
Q.保険金や給付金が受け取れないのはどのような場合?
3.告知義務違反による解除の場合
現在の健康状態、過去の傷病歴、職業などについて事実を告げなかったり、偽りの告知をしたなどの「告知義務違反」があった場合は、営業職員などから告知を妨げられたり、告知をしないことを勧められたときなどを除き、告知義務違反により契約・特約が解除となり、保険金・給付金が受け取れないことがあります。
しっかりと書いてありますね。
「営業職員などから告知を妨げられたり、告知をしないことを勧められたときなどを除き、」
と。
保険会社は、契約後2年間で告知義務違反に気づいたら、契約を解除することができます。逆を言えば、契約をとった人間(販売員)と本人(被保険者)が2年間病気を隠し通せたら、いくら加入時に告知義務違反があってもOKということです。
私の知り合いの保険屋さんは、大変この症例で怒り、そして悲しんでいました。
何百万・何千万のお金が関わる世界ですから、きれいごとばかり言ってはいられません。
人(契約者)を疑うことも出てきます。
しかし、本当に故意に騙して契約したという事実は、初めてだったようです。
勉強熱心だし、保険会社に都合のいい保険だけを勧めるような人ではない人だけに、お気の毒でした。
そして私はまた、生命保険のうまみと怖さを知ったのでした・・・。
決してこの記事を読んで、うまく保険金や各種給付金を受け取ろうと告知義務違反を使ってはいけませんよ。
病気というのは、早期発見・早期治療が鉄則です。
お金のためとはいえ、自分の命を危険にさらしてまで、3か月待ったりしてはいけないのです。
癌細胞というのは、1日や1週間で増殖するものではありません。
しかし、3か月というのは長すぎます。
その間に他の臓器へ転移していたら?
お金では済まされない問題になってしまいます。
生命保険は「もしも」のためのものであって、病気になってから受け取ったり加入するものではありません。
何によりも、お金は大事ですが、「人として」正直でありたいものですよね。