便秘について知ろう~便秘の定義~
便秘は私達にとって、身近な問題です。
でも、便秘って何日出なかったら便秘なの?
便秘の定義って?
放っておいたらどうなるの?
どこからが病気?
身近な割に、意外に知らないことが多いものですね。
その状態で、便秘薬だけは常用していたら・・・それはちょっと危険かも。
今回は、
【1】便秘とはどんな状態をさすのか
【2】便秘がもたらすこわーい病気
【3】便秘と生命保険の関係
の順でお伝えしていこうと思います。
まず、【1】便秘とはどんな状態をさすのでしょうか。
何日排便がなかったら、便秘というのでしょうか。
便秘といったら「ピンクの小粒・コーラック」・・・ですよね。
昔からありますものね。
下剤のお世話になったことが1度もない私ですら、なぜかこのフレーズは覚えています。
お世話になっている人も、大勢いるのではないでしょうか。
実は、これら市販薬の乱用が慢性便秘を更に悪化させている・・・と近年問題になっているんですね。
でも、上手に使えば病院にかからずに排便コントロールができるので、使用そのものが必ずしも悪いとは言い切れません。
使用するかどうかは別として、コーラックの製薬会社である大正薬品の便秘の仕組みは、一般人向けにわかりやすくまとまっているので参考になります。
ただ、はっきりとした便秘の定義は書いてありません。
もう少し具体的に定義するとしたら、どこからが便秘となるのでしょうか。
『慢性便秘とは、簡潔に定義すれば「排便回数の有意な減少かつ・または排便困難を呈する場合」と考えれば理解しやすい。
前者の排便回数の減少は週3回未満の排便回数と定義される。
後者の排便困難症状とは「排便時の怒責」「残便感」「頻回便」「肛門の閉塞感(会陰部の違 和感)」である。』(平成27年度日本内科学会生涯教育講演会 慢性便秘の診断と治療 中島 淳 より抜粋)
便秘というのは、ただ便が出ないだけと思っていませんか?
この発表によれば、排便困難症状があれば毎日出ていたとしてもそれは便秘なのです。
そしてこれは身体的な問題だけではなく、本人の生活の質に関する問題です。
というわけで、多くの人がなんとなく抱いている「3日出なかったら便秘」がイメージとしては正しいと言えそうです。
毎日出ていても大腸の壁には便の残りかすが溜まるのですから、3日に1回ですっきり出し切れるはずはありません。
ですから、週3回未満の排便回数なら、結局は排便困難症状も伴うのではないでしょうか。
ただ、排便回数が週3回未満なんて、高齢者や女性なんてごく普通にいると思います。
最近では便秘で悩む子どもが増えていて、成長発達の面にも影響が出ています。
では、便秘を放っておいたらどうなるのでしょうか?
おなかが張るとか痛いという症状がなくて3~4日排便のない人なんて、そこらじゅうごろごろいます。
中には1週間出ない人もいるくらい。
症状がないのなら、放っておいてもよいのでは?
そう思っている人もいるでしょうけれど、それはいけません。
便秘は、とても怖い病気を起こします。
逆に、病気だから便秘ということもあります。
たかが便秘で騒ぎす!?
いいえ、そんなことはありません。
では、便秘のからむこわーい病気についてお伝えしましょう。
たかが便秘と侮るなかれ ~便秘がもたらすこわーい病気~
よく便秘の症状というと、肌荒れや美容面のことを言われることが多いと思います。
実際、肌荒れで悩んでいる女性も大勢いることでしょう。
出すべきものを出さないと、肌荒れ以外にもいろんなことが起こるものなんですね。
(大正薬品の便秘の仕組み より)
該当するものは、いくつありましたか?
でも、便秘で起こるのはこれだけではないんですね。
むしろこれらは命に関わることはありません。
私が病院の外来勤務をしていて、実際に遭遇したケースをご紹介しましょう。
これを読んだら、たかが便秘・・・なんて言えなくなってしまうかもしれません。
ケース① 「10日以上便が出なくて緊急入院」の女性
ある日、20代の女性が腹痛で来院しました。
本人には心当たりがあり、便秘のせいだと言います。
何日出ていないのかというと・・・「思い出せないくらい」。
記憶をたどってもはっきりしなかったのですが、最低でも10日は出ていないとのこと。
そりゃあ痛くなるわけです。
食べるものだけ食べて、出すべきものを出していないのですから。
でも、この場合はよくある「下剤処方しておきますね」では済みませんでした。
念のために撮影したレントゲン写真で、あまりにも便秘を放置しすぎてイレウスを起こしていることがわかったからです。
イレウスは、腸管の中身がつかえたり血流障害を起こすものですが、この女性の場合は単純に、10日以上の便がつかえたことで起こったのです。
大腸は水分を吸収する場所なので、大腸で停滞する時間が長くなればなるほど水分が吸い取られてカチカチになり、それが肛門付近で栓をするようになってしまいます。
便秘の期間が長いほど、出にくくなるという悪循環。
事実、この女性は自力で便を出すことができませんでした・・・。
そして、ただ栓がつかえているだけではなく、パンパンになった腸管が破裂寸前となっていたのです。
このまま放置しておくと、腸管が破れて腹腔内に腸内容物(つまり便)がばら撒かれてしまいます。
こうなると、ショック状態を呈して命に関わりますので、緊急手術となります。
こんな状態であることがわかっていて帰宅させるわけにはいきませんから、彼女はそのまま入院してまずは便を出す処置を受け、絶飲食にして24時間続く点滴が開始されました。
それから、パンパンになっている腸の圧を抜くために、鼻からイレウスチューブという管を挿れることになりました。
数日後には無事に退院していましたが、たかが便秘があわや一大事・・・となりかねない、ヒヤッとしたケースでした。
本当に単純な便秘を放置しただけでイレウスというのは、私も初めて。
たかが便秘なんて言っていられないと、痛感させられたのでした。
ケース②「出せないのは、“先客”のせいだった」男性
ある60代の男性が、便の出が悪いと排便困難症状を訴えて来院しました。
男性でも便秘になる人はいますし、高齢になると男女問わず腹圧も下がりますし、腸の動きも低下しますから、便秘を起こしやすくなります。
そこで、医師はとりあえず便を柔らかくする薬を数日分処方し、その間に大腸の検査を受けるように勧めました。
男性は医師の勧めた通り、大腸の内視鏡検査を受けました。
そこで、便秘の原因がはっきりしたのです。
なんと、肛門からすぐの場所に巨大な腫瘍が‼
ケース①では自分の便が固まって栓をしていましたが、この男性の場合は少しずつ増大していった腫瘍が栓をしてしまい、出せなくなっていたのです。
よくよく話を聞くと、男性は便秘に困って来院しましたが、実は出るときには常に下痢だったそう。
大腸に腫瘍のある場合の典型的な症状なのですが、腫瘍が大きくなるとその隙間から出てくるしかないため、全く排便がないか、出ても水様便に近い便になってしまうのです。
この男性の場合は、内視鏡のカメラを奥まで入れることのできないくらいに腫瘍が増大していて、腸の中を占拠していました。
放っておいたら、数日でイレウスを起こして腸が破れてしまっていたことでしょう。
そのまま緊急入院となり、精密検査から手術という流れになりました。
本人としてはたかが便秘で、先生に勧められたからと検査を受けたのですが、原因は大腸がんと判明しました。
出したくてもがんという「先客」がいたから、出るに出られなかったのです。
イレウスには原因やメカニズムの面からいくつかの分類がありますが、ケース①ケース②どちらも、単純性イレウスです。
確かに、腸の中でつかえただけの単純なものではありますが・・・下手したら命の危険がありました。
②の男性については、大腸がんによる命の危険というのは、治療を続けている今もあるのですけれど。
便秘がイレウスを起こすし、大腸がんがあるからこそ便秘になってイレウス一歩手前の状態になった・・・。
そう考えると、便が出ないということは本当に怖いことだと思いませんか?
便秘と生命保険の関係 ~便秘は病気?~
上でお伝えしたケース①ケース②どちらも、便秘と思ったら実はとんでもない状態だったという実際の症例です。
便秘というと若い女性にありがちなものだと軽視しがちですけれど、そうはいっていられないことがあるのです。
おまけに、便秘の定義はあるようであやふや。
- 週3回未満の排便回数
- 「排便時の怒責」「残便感」「頻回便」「肛門の閉塞感(会陰部の違 和感)」などの排便困難症状
となると、みんな便秘じゃないの?ってなります。
だって、誰でもある程度はお腹に力を入れて(努責)便を出すし、すっきり出ない感じ(残
便感)も、珍しいことではありませんよね。
すると、みーんな便秘ってことになってしまう?
これから生命保険に加入しようかなと思っている人は、便秘と告知しなくてはならないの
でしょうか。
がんや腫瘍は、突然急激に大きくなるものもありますが、細胞レベルの発生から目に見えて通過障害を起こすようになるまで、年単位でかかります。
少しずつ腸管の中で存在管を増していくので、本人にとっては何日も出ないという事態でないと便秘という認識がされません。
ケース①の単純な便秘の放置でイレウスまでいくケースは本当にごく稀ですが、ケース②の大腸がんの症状として便秘となるケースは、私達医療従事者からすると珍しいものではありません。
だからこそ、医師はただ下剤を処方して終わりにするのではなく、その原因となるものがないかどうか、大腸カメラを受けるべきだと患者さんに勧めたのです。
生命保険会社が恐れるのは、そんなにレアケースでもない②の方。
こういう人が新規で保険に加入してしまったら、払い込み保険料に対して支払う保険料や給付金の方が多くなってしまいかねません。
がん保険の場合、実は1度の入院給付金の日数に制限がありません。
ケース②の男性ががん保険に加入して免責期間である3か月が経過した頃に、たまたま便秘が気になって受診したとしましょう。
内視鏡検査の日にそのまま緊急入院し、術前の検査一式を行って大腸がんの手術。
手術による傷口が落ち着いたところで、入院を継続したまま今度は取り切れていないがんや遠隔転移に対して、抗がん剤治療を行ったら?
手術の経過が思わしくなく、そのまま入院が長引いてしまったら?
抗がん剤による副作用で好中球減少症になり、入院で個室隔離が必要となったら?
重症感染症にかかってしまったら?
一つの処置が望む方向に向かわず、合併症を起こす可能性はあります。
そうなると、彼一人に数万円の保険料に対して数百万円の保険金・各種給付金を払う可能性があります。
これが死亡保険であった場合、がん診断給付金や手術給付金を支払わない代わりに、高額な死亡保険金を払うことになるかもしれません。
じゃあ便秘だと生命保険に入れないのかというと、そうではありません。
いきなり無制限型にまで引き上げなくても、加入できるものはあります。
ただし、それは各生命保険会社で、各保険商品によっても対応の分かれるところです。
A社がダメでも、B社は加入できた。
C社の通常の医療保険はダメでも、C社の引き受け基準緩和型商品なら加入できた。
最初に申し込んだD社で、なんの問題もなく加入できた。
このように、各社対応はバラバラとなることもあります。
申し込んでみるしかありません。
とりあえず加入できるか知りたいという場合には、保険の営業マンからおおよそのラインを聞くことは可能ですが、それもただの目安でしかありません。
本当に加入できるか、もしくは部位別不担保などの条件を付帯させられるかまでは、営業マンではわかりません。
自分の身に「もしも」の事態が起こるのは、明日かもしれない・・・そう思ってしまうと、早く何かしらの保険に加入しておきたいと思うもの。
でも、何も起きずに明日を迎える可能性の方が明らかに高いと思いませんか?
生命保険は、緻密な計算によって作られている商品です。
ですから、私たちも確率で対応しましょう。
明日無事でいる確率、1か月後に無事でいる確率、1年後に無事でいる確率・・・先になればなるほど下がりますよね。
でも、数週間かけて加入すべき生命保険を検討したところで、私達の身に何か起こる確率はあまり変わらないと思いませんか?
1か月1000円の保険料の違いは、1年たてば1万2000円の差、10年で12万円の差です。
生命保険において数千円の差が出ることなんて、よくあることです。
もし5000円の差なら1年で6万円、10年で60万円の差です。
だからこそ、最初が大事なんです。
それに、仮に保険料の安い生命保険に加入していても、いざというときに「お支払いできません」では困ります。
必要な保障を、できるだけ安い保険料で受けられるものはないか、ゆっくり探してみましょう。
そして、もし新規加入する保険が見つかったら、告知は正直に、少し恥ずかしいくらいに伝えておきましょう。
実は便秘がちで市販の下剤をよく飲んでいた・・・ということが後で発覚すれば、せっかく払い込んだ保険料が水の泡になってしまうかもしれません。
たかが便秘、されど便秘。
生命保険と便秘なんて関係ないと思っていたら大間違いなんですね。
便秘は、生活習慣を正すのが基本です。
やたらと薬に頼るのではなく、まずは生活習慣に気をつける。
それでも治らなかったら・・・早めの受診をお勧めします(*^^*)